完成工事未収入金とは?売掛金との違いと仕訳を解説

完成工事未収入金とは?売掛金との違いと仕訳を解説

完成工事未収入金とは、建設業会計で使われる勘定科目で、引き渡しが完了した工事の代金のうち、まだ入金されていない未収額を指します。
一般会計でいう売掛金に近い性質を持つ流動資産で、貸借対照表の資産の部に計上される科目です。

完成工事未収入金という勘定科目を決算書で目にして、「これは普通の売掛金とどう違うのか」と戸惑った経営者や経理担当者は少なくないのではないでしょうか。
建設業会計には独自のルールがあり、一般会計とは別の科目を使うため、最初は混乱しやすい部分です。

本記事では、完成工事未収入金の基本的な意味から、仕訳の書き方、売掛金や未成工事支出金との違い、マイナス残高が発生する原因と対処法、経営管理上のポイントまでを解説します。

 

INDEX

完成工事未収入金とは?

まずは完成工事未収入金の基本的な定義と、なぜ建設業だけが専用の勘定科目を使うのかを整理しておきましょう。

完成工事未収入金の定義

完成工事未収入金は、建設業会計に固有の勘定科目で、次の3つの条件を満たす債権を指します。

  • 工事が完成し、発注者への引き渡しが済んでいる
  • 工事代金の請求権が確定している
  • 代金がまだ入金されていない

つまり、仕事は完了しているのにお金が入ってきていない状態の請負代金を計上するための科目です。資産勘定の中でも流動資産に分類され、貸借対照表の上部に記載されます。

建設業だけが専用科目を使う理由

建設業が一般会計の売掛金ではなく、完成工事未収入金という独自科目を使う背景には、業界特有の事情があります。主な理由は次のとおりです。

  • 国土交通省が建設業法施行規則別記様式に基づく勘定科目を告示で定めている
  • 工事に関する収益と、その他の兼業事業による収益を明確に区分する必要がある
  • 従来の工事完成基準・工事進行基準をベースとした、建設業特有の収益認識実務がある
  • 経営事項審査(経審)の財務諸表提出で、所定の科目分類が求められる

特に建設業許可業者が経審を受ける際は、建設業法施行規則別記様式に沿った財務諸表を作成しなければなりません。普段から建設業会計の科目で帳簿を整えておくと、決算時の組み替え作業が省けます。

参考:国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」

貸借対照表上での記載位置

完成工事未収入金は、貸借対照表の流動資産に区分されます。一般的な記載順は次のとおりです。

区分 勘定科目(例)
流動資産 現金預金
流動資産 受取手形
流動資産 完成工事未収入金
流動資産 未成工事支出金
流動資産 材料貯蔵品
固定資産 建物・構築物・土地など

現金預金や受取手形と同じ流動資産に区分され、短期的な資金化が見込まれる債権として扱われます。

 

完成工事未収入金と他の勘定科目との違いは?

建設業会計では、完成工事未収入金と紛らわしい科目が複数あります。それぞれの意味と違いを整理しておきましょう。

科目 区分 内容 一般会計の対応科目
完成工事未収入金 資産 完成済み工事の未入金代金 売掛金
未成工事支出金 資産 未完成工事に投じた費用 仕掛品
工事未払金 負債 工事に関する未払いの代金 買掛金
未成工事受入金 負債 完成前に受け取った代金 前受金

 

売掛金との違い

完成工事未収入金と売掛金は、どちらも将来お金を受け取る権利を表す資産科目という点で共通しています。違いは対象となる取引の種類です。

完成工事未収入金は、建設工事の請負代金に限って使う科目です。一方の売掛金は、建設業者であっても工事以外の兼業事業(資材の販売など)から生じた未収代金に使います。
同じ会社の中でも、取引の性質によって両者を使い分ける必要があります。

未成工事支出金との違い

未成工事支出金は、まだ完成していない工事に投じた材料費・労務費・外注費などの原価を集計するための資産科目です。一般会計の仕掛品にあたります。

完成工事未収入金と名前が似ているうえ、どちらも資産勘定なので混同しやすいのですが、意味は真逆です。
完成工事未収入金は完成した工事の未回収代金、未成工事支出金は未完成工事にかかった費用を表します。

工事が完成して引き渡された時点で、未成工事支出金は完成工事原価に振り替えられ、同時に完成工事未収入金が計上されるのが基本的な流れです。

 

工事未払金・未成工事受入金との違い

工事未払金は、工事の材料費や外注費などをまだ支払っていない場合に使う負債科目で、一般会計の買掛金にあたります。

未成工事受入金は、工事完成前に発注者から受け取った前受金や中間金を計上する負債科目で、一般会計の前受金に相当します。

完成工事未収入金がお金を受け取る権利であるのに対し、未成工事受入金は将来工事を完成させて引き渡す義務を表す点で、立場が反対と理解するとわかりやすいでしょう。

 

完成工事未収入金の仕訳はどう書く?

ここからは、実際に完成工事未収入金を使う場面ごとの仕訳パターンを見ていきます。請負代金1,000万円(税抜)の工事を例に解説します。

工事完成・引き渡し時の仕訳

工事を完成させ、発注者に引き渡した時点で売上を計上します。

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 11,000,000円 完成工事高 10,000,000円
仮受消費税 1,000,000円

同時に、それまで未成工事支出金として積み上げてきた原価を、完成工事原価へ振り替えます。

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 6,000,000円 未成工事支出金 6,000,000円

 

入金時の仕訳

後日、発注者から代金が普通預金に振り込まれた場合の仕訳です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 11,000,000円 完成工事未収入金 11,000,000円

完成工事未収入金は、入金によって取り崩されてゼロになります。

一部入金・分割入金時の仕訳

中間金や分割払いで、代金の一部のみ入金された場合は、入金額に応じて完成工事未収入金を取り崩します。たとえば1,100万円のうち500万円が先に入金されたケースは次のとおりです。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 5,000,000円 完成工事未収入金 5,000,000円

残りの600万円は、引き続き完成工事未収入金として帳簿に残ります。発注者ごとに残高を把握しておくことで、回収状況を正確に管理できます。

完成工事未収入金がマイナスになるのはなぜ?対策は?

決算書を見ていて完成工事未収入金がマイナス残高になっていると、「何かの処理を間違えたのでは」と不安になります。マイナスになる原因と修正方法を整理しておきましょう。

マイナス残高になる主な原因

完成工事未収入金は本来、受け取るべきお金を表す資産科目のため、原則としてマイナス残高は通常想定されません。なぜマイナス残高が発生するのか主な原因を把握しておきましょう。

  • 実際の請求額より多く入金された
  • 売上計上を忘れたまま、入金処理だけを行った
  • 工事完成前に受け取った前受金を、未成工事受入金ではなく完成工事未収入金の貸方で処理した
  • 同じ入金を二重に計上した
  • 値引きや返金処理を売上のマイナスではなく、入金として処理した

特に多いのは、未成工事受入金で計上すべき前受金を、誤って完成工事未収入金に貸方計上してしまうケースです。建設業会計に不慣れな経理担当者が陥りやすいミスといえます。

マイナス残高の修正方法

マイナス残高を見つけたら、まずは原因を特定するために次の手順で確認します。

  1. 工事台帳と入金記録を案件ごとに突き合わせる
  2. 売上計上漏れがないか、完成・引き渡し日と仕訳日付を照合する
  3. 前受金を未成工事受入金で処理すべきだったかを確認する
  4. 二重計上や値引き処理の誤りがないかチェックする

原因が判明したら、適切な振替仕訳を行ってマイナスを解消します。たとえば、前受金を完成工事未収入金で誤計上していた場合は、未成工事受入金へ振り替える仕訳を入れます。

マイナス残高を発生させないための対策

マイナス残高を未然に防ぐには、日常業務での運用ルールを整えておくことが効果的です。次のような対策が有効でしょう。

  • 案件ごとに売上計上日・請求日・入金予定日・入金日をひも付けて管理する
  • 前受金は受領段階で必ず未成工事受入金として処理するルールを徹底する
  • 月次で完成工事未収入金の残高一覧をチェックし、異常値を早期に発見する
  • 工事台帳と会計帳簿を連動させ、二重入力を避ける

エクセルでの手作業管理は転記ミスや確認漏れの原因になるため、案件数が増えてきたら業務管理システムの導入を検討する価値があります。

完成工事未収入金は経営にどう影響する?

完成工事未収入金は単なる会計科目ではなく、経営の健全性を映す重要な指標です。残高が増えすぎると資金繰りに直結するリスクがあるため、経営者として把握しておきたいポイントを整理します。

黒字倒産につながる回収サイトの長期化

建設業は、工事の請負金額が大きく、回収サイトも長くなりがちな業界です。完成工事未収入金が増え続けると、帳簿上は黒字でも手元の現金が枯渇する、いわゆる黒字倒産のリスクが高まります。

特に大型案件を受注した直後は、材料費や外注費の支払いが先行し、入金が後ろにずれ込むケースが多いものです。

完成工事未収入金の残高を定期的にチェックし、回収サイトが想定より延びていないかを把握する習慣が欠かせません。

 

運転資金への影響

完成工事未収入金は、いずれ現金化されるとはいえ、回収までは運転資金で工事費用を立て替えている状態です。残高が大きくなるほど、運転資金の圧迫要因となります。

金融機関からの借入や手元キャッシュで賄える範囲を超えると、新規受注を断らざるを得なくなる事態も起こり得ます。受注計画と資金計画はセットで考える視点が重要です。

滞留債権の早期発見が重要

回収予定日を過ぎても入金されない滞留債権は、放置すれば貸倒れのリスクが高まります。発注者の経営悪化や紛争が背景にある場合、早期に対応すれば回収できた金額も、時間が経つほど回収困難になるものです。

完成工事未収入金の一覧から、入金予定日を過ぎた案件を即座に抽出できる仕組みを整えておくと、督促や交渉のタイミングを逃さずに済みます。

完成工事未収入金の管理効率化には『AnyONE』がおすすめ!

完成工事未収入金の管理は、案件数が増えるほど煩雑になります。

エクセルや手書きの台帳では、入金状況の更新漏れや残高の取り違えが起きやすく、経営判断に必要なデータがリアルタイムで取れないという課題も生まれがちです。

ここでは、工務店向け業務管理システム『AnyONE(エニワン)』を活用することで得られる4つのメリットを紹介します。

案件ごとの請求・入金状況を一覧で把握できる

AnyONEを使えば、すべての案件について請求済み・入金済み・未入金のステータスを一覧で確認できます。どの現場の代金が、いつ入金予定で、現在どの段階にあるかを画面ひとつで把握できる仕組みです。

経営者が会議や打ち合わせの合間にスマートフォンから確認できるため、「未回収案件はどれだったか」と都度経理担当に問い合わせる必要もなくなります。月次の試算表を待たずに、リアルタイムで資金繰りの判断材料を得られるのが大きな利点です。

見積から請求までを1つのデータで管理できる

見積書・発注書・請求書を別々のファイルで管理していると、項目名や金額の不整合が起きやすくなります。

完成工事未収入金の残高も、請求書ベースの金額と帳簿上の金額がズレてしまえば、正確な債権管理ができません。

AnyONEは、見積から請求までを1つの案件データでつないで管理できます。
見積で組んだ内訳がそのまま請求書に反映されるため、書類間の不一致が起こりにくく、完成工事未収入金の計上額も実態と一致した状態を保てる仕組みです。

滞留債権の早期発見につながる

入金予定日を過ぎた案件を、AnyONEの画面上で簡単に抽出できます。
そのような案件をリストアップすれば、督促のタイミングを逃さず、滞留債権が長期化する前に手を打てるでしょう。

特に複数の現場が同時に動いている工務店では、人の記憶や個別の表計算ソフトに頼った管理だと、未回収案件が埋もれてしまいがちです。

システムで一元管理することで、回収漏れを構造的に防げます。

工事台帳と連動した管理ができる

完成工事未収入金の正確な管理には、工事台帳との連動が欠かせません。AnyONEなら、案件ごとの原価・売上・入金がひとつのデータで結びついているため、工事台帳の更新がそのまま債権管理にも反映されます。

経理担当者が会計ソフトへ転記する際の手間も減り、ミスのリスクも下がります。
経営者・現場監督・経理担当の三者が同じデータを見られる環境を整えることで、組織全体での判断スピードも上がるはずです。

AnyONEで解決できること

詳しくは以下ページをご確認ください。

完成工事未収入金についてよくある質問

最後に、完成工事未収入金についてよく寄せられる質問にお答えします。

完成工事未収入金は流動資産ですか?固定資産ですか?

完成工事未収入金は、原則として流動資産に分類されます。建設業法施行規則別記様式に基づく国土交通省の告示でも、流動資産の区分に配置されている科目です。

ただし、決算日から1年以内に回収できる見込みがない場合や、発注者の破産・民事再生などで回収困難になった場合は、破産更生債権等として、投資その他の資産へ区分変更する必要があります。

完成工事未収入金の貸方には何を書きますか?

完成工事未収入金は資産科目なので、計上時は借方に記載します。貸方に記載するのは、残高を取り崩すときです。代表的なケースは次のとおりです。

  • 代金が入金された場合:貸方に完成工事未収入金、借方に現金預金
  • 貸倒れが発生した場合:貸方に完成工事未収入金、借方に貸倒損失または貸倒引当金
  • 値引きや返金を行った場合:貸方に完成工事未収入金、借方に売上値引など

工事進行基準の場合、仕訳はどう変わりますか?

工事進行基準では、工事の完成を待たずに進捗度に応じて売上と原価を計上します。各決算期で、進捗度に応じた完成工事高を計上する際、未成工事受入金(前受金)を超える部分は完成工事未収入金として処理する流れです。

なお、2021年4月以後に開始する事業年度から、上場会社などには収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)が適用され、工事進行基準という用語自体は収益認識基準の適用に伴って形式上は廃止されています。

ただし、実質的な処理は新基準に引き継がれているため、進捗度に応じた収益認識という考え方は今も維持されています。中小の工務店では従来どおりの実務が続いているケースが大半です。

完成工事未収入金が回収できない場合はどう処理しますか?

回収困難になった完成工事未収入金は、状況に応じて次のいずれかの処理を行います。

  • 貸倒引当金を設定する:回収不能の可能性が高い段階で、見積額を引当金として計上
  • 貸倒損失として処理する:法的整理や時効など、回収不能が確定した時点で損失計上
  • 破産更生債権等へ振り替える:法的手続き中の債権は、固定資産へ組み替え

税務上の貸倒損失計上には要件があるため、税理士と相談のうえで処理を進めるのが安全です。

まとめ

完成工事未収入金は、建設業会計に固有の流動資産科目で、引き渡しが完了した工事のうち未入金となっている代金を表します。
一般会計の売掛金にあたる科目ですが、建設業法施行規則別記様式に基づき、専用の勘定科目として整理しておくことが、経審対応や正確な経営判断につながります。
特に、案件数が増えてくると、エクセルや手作業の台帳では完成工事未収入金の残高把握や滞留債権の早期発見が追いつかなくなりがちです。

AnyONEを活用すれば、見積から請求・入金までを1つのデータで管理でき、未回収案件の見える化や経営判断のスピードアップを実現できます。
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監修:ソルビス税理士法人 副代表:甲斐 秋帆 Akiho Kai
<資格・学位>税理士/修士(法学)
<経歴>
■青山学院大学大学院法学研究科を卒業後、デロイトトーマツ税理士法人へ入社。
税務の専門家として、法人・個人の税務実務に携わる。
■デロイトトーマツ税理士法人を退職後、野村證券株式会社のプライベートバンキング部にて、資産承継および事業承継のコンサルティングに従事。
富裕層やオーナー経営者の資産承継、事業承継に関する課題解決を支援する。
■ヘルスケア領域で起業し、クリニックを設立し経営・財務に携わる。
現在は、税務・財務・資産承継の専門知識を活かし、中小企業ベンチャーに向けた税務顧問・経営支援を行っている。


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