【チェックリスト付き】なぜ建設業は資金繰りが苦しいの?工務店が今すぐ取り組むべき原因分析と5つの対策
国土交通省と建設業主要3団体が連名で、民間発注者・施主に向けて民間請負契約約款の活用徹底を呼びかけています。背景にあるのは2025年12月に全面施行された改正建設業法です。この動きは、工務店にとって「契約の見直し」を進める大きな追い風になります。
この記事では、そもそも民間約款とは何か、なぜ注目されているのか、そして工務店が今すぐ取り組むべき契約実務の見直しポイントを具体的に解説します。
INDEX
工務店が日々交わす工事請負契約。その契約書に添付・組み込まれる「詳細な取り決め集」が約款です。そもそも約款とは何か、どのような種類があるのかを整理します。
工事請負契約書とは、発注者と受注者が工事の内容・金額・工期などの基本条件に合意したことを示す書類です。一方、約款(やっかん)はその契約書では書ききれない詳細な権利義務関係を規定したものです。
建設業法第19条では工事請負契約の書面締結が義務づけられており、約款はその契約書と一体として機能します。約款なしの契約書は、いわば「骨格だけで中身がない」状態であり、トラブルが発生したときに双方の主張が食い違いやすくなります。
建設工事で使われる主な約款には以下の種類があります。
国土交通省の中央建設業審議会(中建審)が作成した、官公庁発注工事に適用される標準約款です。公共工事では原則としてこの約款が使用されます。
同じく中建審が作成した民間工事向けの約款です。(甲)は比較的大規模な工事を想定した発注者向け、(乙)は個人施主など民間小規模工事向けとなっています。国交省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
日本建築学会・日本建築士会連合会・日本建設業連合会・全国建設業協会など7つの建設関連団体が共同で作成した約款です。発注者と受注者の対等な立場を重視した内容で、解説書も整備されており、民間工事では広く活用されています。
工務店が関わる工事で主に使用するのは、この後者2つ(民間建設工事標準請負契約約款・民間七会約款)です。公共工事も手がける工務店であれば公共工事標準約款にも対応が必要ですが、住宅・リフォーム中心の工務店では民間向け2種が実務の中心になります。
自社独自の簡易書式や口頭合意で工事を進めた場合、以下のようなリスクが高まります。
2025年から2026年にかけて、建設業の契約をめぐる環境が大きく変わっています。その背景と意味を解説します。
2024年6月に公布された改正建設業法が、2025年12月12日に全面施行されました。今回の改正の柱は「担い手確保・育成」と「適正な労働環境の整備」です。
この改正建設業法の施行を踏まえ、中建審の民間工事標準請負契約約款(甲・乙)が2025年12月2日に改正され、民間(七会)連合協定工事請負契約約款も2025年12月12日付で改正されました。改正後の民間約款には、以下の条項が新たに追加・整備されました。
① 請負代金内訳書の明示項目の追加
法定福利費に加えて、材料費・労務費・安全衛生経費・建設業退職金共済掛金を請負代金内訳書に明示する条項が加わりました。工事にかかるコストの内訳を可視化することで、適正な労務費の確保につなげることが目的です。
② 労務費等の支払いに関するコミットメント条項の新設
労務費や賃金の適正な支払いに関する表明・情報開示の条項が新設されました。
なお、この条項は契約当事者の任意で利用できる選択条項となっています。
③ 契約変更に関する規定の追加
以下の3点が追加されました。
今回、国土交通省・日本建設業連合会・全国建設業協会・全国中小建設業協会の4者が連名で、民間発注者・施主向けのリーフレットを作成・配布したことは、業界として異例の取り組みです。
これまでも約款の活用は推奨されていましたが、民間工事では「発注者側が自社に有利な契約書を用意し、受注者がそれに従わざるを得ない」という片務的な慣行が根強く残ってきました。今回の連携は、こうした慣行に対して国と業界団体が一体となって「対等な契約関係への転換」を促す、強いメッセージといえます。
改正後の民間約款を活用することで、工務店には以下のメリットがあります。
資材価格高騰時に代金変更を請求できる根拠が明確になる:
従来は口頭交渉に頼るしかなかった場面で、契約上の根拠を持って協議を申し出られます。
約款の活用は発注者(施主・民間事業者)にとってもメリットがあります。
今回の動きを受けて、工務店として具体的に何をすべきかを整理します。
まず、自社で現在使用している工事請負契約書・約款が最新の改正建設業法に対応しているかを確認しましょう。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
約款を整備したうえで、社内のオペレーションとして「変更が発生したときにどう動くか」のルールを明文化しましょう。
具体的には以下の対応が有効です。
なお、建設業法第19条に基づき、契約変更も原則として書面(または法定要件を満たした電磁的記録)で行う必要があります。LINEやメールなどの簡易なやり取りは法定の電磁的記録に該当しない場合があるため注意が必要です。
建設業法では、請負契約書・変更契約書などの書類について一定期間の保管が義務づけられています(建設業法施行規則第26条等)。
保管義務との関係で実務上よく見られる問題として、以下が挙げられます。
これらを防ぐには、契約書類を工事ごとに整理・一元管理し、担当者が変わっても確認できる体制を整えることが必要です。
ここまで解説してきた約款の整備・変更請求ルールの構築・書類管理の徹底は、いずれも「正確な情報を適切なタイミングで記録・管理する」という共通の基盤に支えられています。
しかし、これをExcelや紙ベースで運用しようとすると、担当者の負担が大きく継続が難しくなります。工事ごとの変更履歴が追いにくく、複数の現場を同時管理する中小工務店では、書類の抜け漏れが生じやすいのが実情です。
契約管理を「仕組み」として定着させるには、工事管理・書類管理・入出金管理を一元化できる業務システムの活用が根本的な解決策になります。適切なシステムを導入することで、契約変更の記録、追加工事の請求管理、書類の保管状況の確認などをリアルタイムで把握できるようになります。これが、今回の法改正への対応と、工務店の経営安定を同時に実現する近道です。
契約管理を含む工務店の業務全体を一元化するシステムとして、工務店・建設業専用の業務管理システム「AnyONE(エニワン)」が多くの工務店に選ばれています。
AnyONEは、見積・実行予算・発注管理・入出金管理・工事管理・顧客管理をひとつのクラウドシステムで管理できるソフトウェアです。工事ごとに契約情報・変更履歴・原価・入出金状況を紐づけて管理できるため、「どの現場の契約がどのような状態か」を経営者・担当者がリアルタイムで把握できます。
今回の改正建設業法への対応として特に有効なのが、追加工事・変更工事の管理機能です。追加発注が発生した際に原価をリアルタイムで更新し、請求書発行まで一連の流れをシステム上で管理できるため、変更履歴の抜け漏れや請求忘れを防げます。
導入実績は3,600社超、継続率99.4%。多くの工務店と取引する建材流通商社が開発したシステムであり、工務店現場の実態に即した設計と手厚いサポート体制が評価されています。
国土交通省と建設業主要3団体が連名で民間約款の活用徹底を呼びかけた今回の動きは、工務店にとって「対等な契約関係」を実現するための大きな追い風といえます。
工務店として今すぐ取り組むべきことは、現在の契約書・約款が最新の改正に対応しているかの確認、変更請求ルールの社内整備、そして契約書類の一元管理体制の構築です。これらを着実に「仕組み化」することで、法改正への対応と経営の安定を同時に実現できます。
約款対応を機に契約書類の管理体制や業務の仕組み化を進めたい方は、AnyONEの資料請求・無料デモをぜひご活用ください。
髙沢 晃平(たかさわ こうへい)
ネクスパート法律事務所
企業法務部門Manager 弁護士
東京都立大学法科大学院修了。
上場準備中の企業(現・東証グロース市場上場企業)の管理部門において、IPO準備業務に従事。実務経験を積む中で新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(東京弁護士会所属)。
現在は、薬機法・医療法を中心とした規制対応、スタートアップ・ベンチャー法務、フランチャイズ法務を主な取扱分野とし、IPOを見据えた法務体制構築支援を行っている。
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