【建設業】法定福利費の算出方法とは?ざっくり費用を割り出す方法や書き方

【建設業】法定福利費の算出方法とは?ざっくり費用を割り出す方法や書き方

建設業の経営を健全に維持するためには、「法定福利費」を正しく理解し、見積書へ適切に反映させることが不可欠です。
しかし実際には、「そもそも何を指すのか」「いくら見込むべきか」「見積書にどう書けばいいのか」と悩む工務店・建設業者も少なくありません。
この記事では、法定福利費の基本から計算式、見積書の書き方、未払いリスクまでをわかりやすく解説します。

さらに、こうした課題を根本から解決する手段として、建設業向け業務管理システムAnyONEの活用方法や事例についても紹介しています。

 

 

法定福利費とは

法定福利費とは
法定福利費とは、法律によって事業主に負担が義務付けられている福利厚生に関する費用のことです。これには健康保険法や労働基準法、厚生年金保険法といった法律に基づく費用が含まれますが、具体的には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、子ども子育て拠出金の6種類があります。

健康保険

健康保険は従業員およびその家族が加入でき、医療費の自己負担を軽減できる制度です。健康保険料は会社が半分を負担し、残額は従業員の給与から差し引かれます。

なお、正社員以外にもアルバイト・パートなど非正規雇用であっても、以下の条件に該当する場合は健康保険へ加入しなければなりません。

⚫︎従業員が常時51名以上の事業所へ勤務していること
⚫︎週の所定労働時間が20時間以上であること
⚫︎2ヶ月以上の雇用見込みがあること
⚫︎月額88,000円以上の賃金を受け取っていること
⚫︎学生ではないこと

厚生年金保険

厚生年金保険とは、65歳以上の高齢者または障害、死亡の際に給付金を受け取れる社会保障制度です。国民年金に厚生年金保険料を加算して支払うため、厚生年金に加入している期間が長いほど、受け取れる年金が多い点がメリットとなります。なお、保険料は健康保険と同じく会社と従業員が半分ずつ支払う仕組みです。

介護保険

介護保険は介護サービス利用者のための支援制度です。40〜64歳までの健康保険加入者は、毎月保険料と合わせて介護保険料が請求されます。その場合も健康保険と同じく、会社と従業員が折半して支払います。また、65歳以上の方は居住地の自治体より介護保険料の請求が行われます。

雇用保険

雇用保険とは、万が一会社を退職した際に再就職までに給付金を受け取るための制度です。また、育児や介護などで長期的に休職しなければならない際にも、雇用保険から給付金を受け取れます。

雇用保険は原則週に20時間以上勤務しており、最低でも31日継続して雇用の見込みがある従業員が加入対象です。

なお、雇用保険料率は業種によって異なります。

労災保険

労災保険とは、仕事が原因で発生するケガや病気、死亡に対しての補償金です。建設事業者が従業員を1名以上雇っている場合は、労災保険への加入が義務づけられています。なお、雇用形態に関係なく全ての従業員が加入対象であり、保険料の負担は100%事業者側です。

建設業では特に、工事現場におけるケガのリスクが高いため、特に重要な保険といえるでしょう。

子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金は、国または自治体が実施する子育て支援サービスのために、徴収される費用です。従業員の給与に応じて拠出額を計算し、国や自治体が企業から徴収します。

なお、従業員に子どもがいるかどうかは関係なく、厚生年金に加入している人は全て上記拠出金の対象となります。

法定福利費と法定外福利費の違い

法定福利費と法定外福利費の最大の違いは、「法律で義務づけられているかどうか」です。

  • 法定福利費:健康保険・厚生年金・労災保険など、法律で企業に負担が義務づけられている社会保険料。従業員を雇用している限り、必ず発生する費用です。
  • 法定外福利費:企業が任意で支給する福利厚生費。法律上の義務はありません。

つまり、法定福利費は法的に必須のコストであり、法定外福利費は企業が従業員満足や定着を目的に任意で負担する費用です。
建設業ではこの区別を明確にしておくことで、見積書や契約書における経費の透明性を確保できます。

法定福利費の対象外となる費用

法定福利費は法律によって事業主に負担が義務付けられている福利厚生費用ですが、すべての福利厚生費用が法定福利費に該当するわけではありません。法定福利費の対象外となる費用には以下のようなものがあります。

区分 対象外となる費用 理由
法定外福利費 ・社宅
・住宅手当
・通勤手当
・食事補助
・社員旅行費用
・レクリエーション費用
・慶弔見舞金
・健康診断費用(法定以上の部分)
企業が任意で支出する福利厚生費用であり、法律上の義務ではないため
個人負担分の保険料 ・健康保険料の個人負担分
・厚生年金保険料の個人負担分
・雇用保険料の個人負担分
・介護保険料の個人負担分
法定福利費は事業主負担分のみを指すため
外注費関連 ・一人親方への外注費
・個人事業主への外注費
個人事業主は自ら社会保険に加入する義務があり、発注者側が法定福利費を負担する関係にないため(ただし、実態として雇用関係がある場合は除く)

 

建設業の法定福利費は一般的には約16.5%

建設業の法定福利費は一般的には約16.5%ですが、社会保険の保険料率の変更とともに変わります。保険料率が変われば、給与が上がっていなくとも法定福利費が上がります。

2025年度の保険料率に関しては、以下のようになっています。

保険種類 料率
健康保険料 各都道府県によって異なる
介護保険料 1.59%
厚生年金保険料 18.3%(事業主負担額は9.15%)
雇用保険料 17.5%(事業者負担額は1.1%)
労災保険 9.5%(建設事業)
子ども・子育て拠出金 0.36%

保険料率の改定時期は社会保険の種類によって変わるため、必ず改定時期を確認して、料率をチェックしてください。

【参考】
厚生年金保険料額表|日本年金機構
令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省 ハローワーク
令和7年度 介護保険料率について|全国健康保険協会千葉支部
労災保険率表(令和6年度~)|厚生労働省
厚生年金保険料額表(令和7年度版)|日本年金機構

法定福利費の未払いは法律違反

法定福利費は法律で定められた福利費であり、概要の費用を支払わないと法律に違反することとなります。

特に建設業界は法定福利費の未加入者が多く、厚生労働省からも社会保険未加入の法令違反への注意喚起が実施されています。(【参考】建設会社の法令違反を手助けしていませんか?

万が一法令違反が認められた場合は、各法令に基づき懲役または罰金刑が課せられるリスクがあるため、必ず加入しなければなりません。なお、上記厚生労働省の注意喚起にも「不適格業者の排除」が掲げられています。もしも法定福利費の未払いがあれば、受注機会を失う可能性があります。自社の信頼を失墜させないためにも、必ず法定福利費を支払うようにしましょう。

建設業における法定福利費義務化の経緯と現状

建設業界では、長年にわたり社会保険未加入問題が深刻な課題となっていました。2011年頃の調査では、建設業の労働者の約4割が社会保険に未加入という状況でした。(【参考】社会保険未加入対策の具体化に向けた 検討について

現在、法定福利費の明示は建設業における標準的な実務となっています。国や地方自治体の公共工事では、法定福利費が明示された見積書の提出が事実上の必須条件となり、社会保険への加入状況は建設業許可申請・更新時の審査項目となりました。

未加入の場合は許可取得が困難になる状況になったことから、国土交通省の調査によれば、2019年時点で建設業界の社会保険加入率は97%超まで改善しました。

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法定福利費の計算方法を計算式付きで解説

法定福利費をざっくり計算する方法を知っておくと、簡単にどの程度の費用が必要か計算できます。

法定福利費をざっくり計算する方法

建設業におけるざっくりとした法定福利費の算出の計算式は「労務費×16.5%」です。これは以下の一般的な保険料率の平均値を元に算出した数値を元にしています。

保険種類 保険料率(合計) 企業負担分 個人負担分
健康保険 10.00% 5.00% 5.00%
厚生年金 18.30% 9.15% 9.15%
雇用保険 1.85% 1.15% 0.70%
介護保険 1.60% 0.80% 0.80%
児童手当拠出金 0.36% 0.36%
労災保険 1.70% 1.70%

もちろん従業員の賃金や家族構成、自治体によって保険料率は変わりますが、大体の金額を知りたい場合はこの計算式を用いると便利です。

正確に計算する方法

建設業で法定福利費を正確に算出するには、「実際の労務費」と「自社の保険料率」を使って計算する必要があります。
ざっくり “労務費×16.5%” のような目安だけで済ませると、後で「見積が甘い」「赤字になった」といった問題につながるので本番見積では必ず個社の数値で積算しましょう。基本の流れは次の3ステップです。

①対象となる従業員の労務費(人件費)を集計する
②保険ごとの事業主負担率を確認する
③労務費 ×(各保険の事業主負担率の合計)で計算する

ポイントは「会社全体の平均」ではなく、「その現場に従事させる人員の労務費」に対して積み上げること。現場ごとに社会保険加入状況や年齢構成(介護保険の有無など)が違えば、法定福利費も変わります。この考え方で積算しておけば、元請への説明根拠にもなり、後出しの値引き交渉に対しても正しく主張しやすくなります。

見積書への法定福利費の記載方法

法定福利費を算出したあとは、以下の図のように見積書に記載してください。

【引用】法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順-国土交通省

建設業界では見積書への法定福利費の内訳の記載がルール化されています
図を見てもわかるように、記載する際は工事費とは分けて明記してください。また、労務費率や保険料率をもとに法定福利費を算出している場合は、工事価格、労務比率、保険料率を明記する必要があります。
なお、法定福利費も消費税の対象である点にも注意が必要です。

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内訳として明記する方法

見積書で法定福利費を内訳に記載する場合は、見本のように工事費と分けて明記します。
法定福利費の項目を分けて、以下のように記載しましょう。

種類 対象金額 料率 金額 計算式
雇用保険料 B p E B × p
健康保険料 B q F B × q
介護保険料 B r G B × r
厚生年金保険料(児童手当拠出金含む) B s H B × s
合計 B t I B × t

※ 介護保険の加入率を加味した保険料率を設定する。

労務費に含める方法

労務費に法定福利費を含める場合はその旨を明記し、対象となる法定福利費の内訳を記載しましょう。

項目 数量 単価 金額
○○工事 1式 ××× A
材料費 B
経費(法定福利費含む) C
小計 D = A + B + C
消費税等 E = D × 8%
合計 F = D + E

見積書作成における法定福利費の注意点

法定福利費の注意点
法定福利費を扱うにあたっては、いくつかの点に注意しなければなりません。ここでは、元請け業者が見積書を作成する場合、下請け業者が見積書を作成する場合それぞれの法定福利費の注意点を解説します。

元請け業者の注意点

元請け業者が見積もりを作成する際は、下請け業者と結ぶ契約で法定福利費の大切さをしっかり伝え、確保するよう心がけましょう。また、見積書に法定福利費がきちんと載っているかを確認することが重要です。もし載っていない場合、下請け業者が従業員の保険に加入させていない可能性があるため、確認作業を怠らないようにしてください。

さらに、見積もりに法定福利費が含まれているかどうかをチェックすることはもちろん、それがあっても労務費や材料費を理由に金額を調整しないように注意が必要です。下請け業者の資金繰りや人材の確保をしっかりサポートし、健全なビジネス関係を維持することが大切です。

また、下請け業者が経済的な問題で倒産しないよう、定期的にチェックを行い、必要なサポートを提供することも元請け業者の役割として大切です。

下請け業者の注意点

下請け業者が法定福利費の見積書を作成する際には、その重要性をしっかりと理解し、正確な計算に基づいて適切に記載することが求められます。見積書には、大まかな概算ではなく、具体的な計算方法を用いて、詳細な金額を記載してください。この際、トン単価や平米単価でざっくりとした金額を出す方法は避け、法定福利費の具体的な費用をきちんと算出する必要があります。

また、自社が負担する法定福利費も、正確に見積もりに反映させることが大切です。これは再下請け業者にも同様に適用され、一貫して精度の高い見積書の作成を心がけるべきです。さらに、もし従業員が保険未加入である場合には、それを放置せず、法令に従って速やかに対応することも重要です。これにより、法令違反を避けるとともに、プロジェクトの進行において信頼性を保つことができます。

このように、下請け業者は見積書を作成する際に多くの点に注意を払う必要がありますが、元請け業者も下請けから受け取る見積書に法定福利費が適切に計上されているかを確認し、必要に応じて指摘や確認を行うことが求められます。これにより、全体として適切なコスト管理と法令順守が実現されます。

社会保険未加入対策

建設業界の社会保険未加入対策において注意すべき点は、2012年以降の規制強化です。建設業許可・更新時の社会保険加入状況確認、元請企業による下請加入状況の確認・指導義務、経営事項審査での未加入企業への減点評価などが実施されています。

元請企業は法定福利費を内訳明示した見積書を活用し、適正な法定福利費の確保と下請企業への支払いに注意を払う必要があります。特に現場入場制限や行政処分リスクもあるため、コンプライアンス面での注意が重要です。

法定福利費が請求された場合の適切な対応

法定福利費を含んだ見積書や請求書を受け取った際の最大の注意点は、法定福利費を値引き交渉の対象としないことです。国土交通省のガイドラインでは法定福利費の削減は不適切な行為とみなされており、建設業法違反となるリスクがあります。

また、法定福利費の計算方法や金額の妥当性を確認する際にも注意が必要です。不当に低い法定福利費は社会保険未加入を示唆している可能性があり、逆に極端に高い場合は見積全体の適正さを確認すべきです。

見積書作成・管理ならAnyONE

ここでは、法定福利費の計上をはじめとした見積作成や管理ができる業務管理システムである「AnyONE」を紹介します。

AnyONEは、工務店などの建設業での利用を想定して作成されたシステムです。建設業で発生する一通りの業務に対応できる機能を備えており、一人親方から中小の工務店、大企業まで規模に関係なく利用できます。

AnyONEには、見積書の作成・管理ができる機能も搭載されています。見積書作成をエクセルでおこなっている企業も少なくないと考えられますが、エクセルだと最新の見積書がどこにあるか見つからない、管理が行き届かないといった事態に陥る可能性があるでしょう。

また、作成した見積書は画面上で一覧表示されるため、すぐに見つけられます。また、検索機能も備わっているため、案件名や担当者名などで検索することで、簡単に見積書にアクセスできます。

AnyONEで作成した見積書は、契約情報に紐づけることも可能です。たとえば、最終的に採用された見積書を本契約として契約に紐付け、採用されなかった見積書を非表示にもできます。非表示機能によって、古い見積書を誤って顧客に提出するといった心配もありません。紐付けされた見積書の情報はそのまま工事台帳に書き込まれるため、担当者の業務負担も軽減されるでしょう。

AnyONE導入事例:株式会社エクシアス

株式会社エクシアス(大阪府東大阪市)は、店舗工事や住宅リフォームを中心に、多様な案件で複数回の見積提出が必要になる体制でした。従来はエクセルで1件あたり10回以上の見積を都度修正して作り直しており、3時間以上かかることも珍しくなく、粗利管理も複雑な数式に頼るなど負担が大きい状況でした。

AnyONE導入後は、協力業者からの見積データをコピー&ペーストするだけで内容を反映でき、金額チェックや過去単価の照合も一元化。見積作成時間は約3時間から約10分と約9割削減され、計算ミスも大幅に減少しました。現在は見積から請求までAnyONEで管理し、さらなる業務全体の効率化に取り組んでいます。
詳しくはAnyONE導入事例「見積作成にかかっていた時間が約9割削減。ミスも減少し精度が向上。」をご覧ください。

 

まとめ

建設業における法定福利費は、従業員を守り、企業の信頼性を高めるために欠かせないコストです。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など、法律で定められた負担を正しく理解し、見積書や契約書に適切に反映させることが、健全な経営と法令遵守の第一歩となります。
一方で、法定外福利費(住宅手当・食事補助など)は企業が任意で支出する福利厚生費であり、法定福利費とは区別して管理することが求められます。こうした区分を明確にすることで、経費構造の透明化と利益の正確な把握が可能になります。

また、法定福利費の計算には最新の保険料率の反映や労務費の正確な積算が必要であり、エクセルでの手作業ではミスや工数の増大を招くケースも少なくありません。
そのような課題を解決するのが、工務店向け業務効率化システム「AnyONE」です。見積書作成から原価・契約・請求管理までを一元化し、法定福利費の計上や管理もスムーズに行えます。
「見積書作成・管理を効率化したい」「法定福利費を正確に反映したい」とお考えの方は、ぜひ資料請求や無料デモで現場業務の効率化と見積精度の向上を体感してみてください。


記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。


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