見積における掛け率の意味とは?役割と重要性や計算方法を解説

見積における掛け率の意味とは?役割と重要性や計算方法を解説

適切な見積の作成は、建設業にとって正当な利益を確保するための第一歩であり非常に重要です。この見積作成において、特に注意しなければならないポイントが掛け率です。

掛け率は原価に直接影響を与えますが、取引実績や関係性、仕入量等の違いで変化することがあります。

この記事では、建設業における見積と掛け率の重要性、掛け率の計算方法と実例、掛け率を抑える方法について解説します。また、掛け率を抑えて利益を上げるための業務効率化ツールにも触れています。ぜひ最後までご覧いただき参考にしてください。

そもそも建設業の見積とは

建設業の見積は、建設会社が主に発注者に対して提出するもので、工事費用の金額と内訳を工事の内容に沿いながら取りまとめた書類です。

工事費用を算出する時に使われるものに、積算と歩掛があります。積算とは、歩掛で得た数値を積み上げていく業務全般のことで、歩掛は材料費に施工費をプラスしたものです。

歩掛は、常に最新の材料費や労務単価を用いて正確な実勢価格を見積に反映させることが重要です。さらに、設計図書や仕様書、施工条件などを精査して、工事内容に応じた歩掛を用いることも求められます。

積算では、この歩掛を積み上げ、諸経費や適正な利益をプラスして工事価格を算出します。

見積における掛け率とは

建設業の見積における掛け率とは、原価に上乗せする利益や諸経費の割合を示す指標です。

原価は材料費や労務費などの直接費用の合算ですが、この原価に対しての、利益や諸経費などの間接費用の割合が掛け率になります。

例えば、掛け率が1.2という場合は、原価の20%が利益や諸経費として上乗せされることを意味しています。

建設業において、この掛け率を適正に設定することは、建設会社の利益確保や市場競争力を維持するために重要です。

掛け率という考え方は、見積作成において重要であるばかりでなく、施工管理の原価管理においても有効なものです。掛け率の基本的な事項から計算方法まで、しっかり理解しておきましょう。

見積における掛け率の意味とは?_01

建設業の見積における掛け率の重要性

建設業において、適正な「掛け率」を設定することは、単に金額を算出する以上の意味を持ちます。それは、企業の利益を守る防波堤であり、顧客に対して妥当な価格を提示するための根拠となるものです。
なぜ建設業では一律の価格設定が難しく、案件ごとに掛け率を吟味する必要があるのか、その背景にある業界特有の事情を見ていきましょう。

案件ごとに条件が異なる

建設工事は「一品生産」と言われるように、二つとして同じ現場はありません。
敷地の広さ、搬入経路の確保しやすさ、近隣環境、そして施主のこだわりなど、案件ごとに施工条件は大きく異なります。同じ坪数の住宅であっても、都市部の狭小地と郊外の平坦地では、発生する経費の割合が変わります。
そのため、一律の掛け率ではなく、個別の条件を反映させた柔軟な設定が不可欠なのです。

積算の専門性が高い

建設業の見積は、数千点に及ぶ材料費や多種多様な職人の人件費(労務費)を積み上げる「積算」によって成り立っています。この複雑なプロセスにおいて、すべての間接コストを細かく算出するのは現実的ではありません。
そこで、積算によって導き出された直接原価に対し、会社の運営費や利益を適切に上乗せする「掛け率」という指標を用いることで、精度と効率を両立させた見積作成が可能になります。

原価が変動しやすい

建設業界は、外部環境の変化による影響を極めて受けやすい業界です。世界情勢による建材価格の高騰や、深刻な人手不足に伴う労務単価の上昇など、見積作成時から着工時、さらには竣工時までに原価が変動するリスクを常に抱えています。
こうした不確実な状況下で、ギリギリの予算設定では不測の事態に対応できません。
リスクヘッジを含めた適正な掛け率の設定は、健全な経営を維持するために極めて重要です。

建設業での掛け率の計算方法

建設業における掛け率の計算方法は、「原価に掛け率を乗じること」となります。ここでは、掛け率の計算方法と注意点、歩掛との関係について解説します。

掛け率の計算方法と実例

見積作成時に掛け率を用いて、見積金額を算出するケースを例に説明します。

材料費や労務費などの直接費用が150万円として、掛け率を1.2で設定している場合、見積金額は150万円×1.2で180万円です。

また、現場で資材を仕入れる場合、メーカーは定価に掛け率を乗じて販売価格を提示してきます。定価が1万円で、掛け率が60%と取り決めされている場合は、6千円が納入価格です。

掛け率を扱う時の注意点

掛け率は、原価に間接費用をプラスした金額の比率を掛けた数値が掛け率になるので、原価を正確に把握する必要があります。そのためには、原価を算出するための関連情報を常に更新して最新情報を収集しておくことです。

社会的、気候的要因で、材料費や運送費、燃料費が高騰しやすいのが建設業の特徴のひとつです。掛け率を扱う時も、正確な実勢価格の把握に努めましょう。

掛け率と歩掛の関係

工事費の見積や施工管理の原価管理などで覚えておいてほしいのが、掛け率と歩掛の関係性です。一般的に、材料費では掛け率、労務費は歩掛が重要とされています。

材料費は、メーカーが自社に設定している掛け率がわかれば、定価に掛け率を乗じて算出可能です。

労務費は、歩掛で使用する人工(にんく)を使えば簡単に計算できます。人工は、(1人×所要作業時間)÷8時間で求め、当該作業が何人工で施工可能かを判断して、作業者の報酬単価を乗じて算出します。

掛け率と他の指標との違い

見積や原価管理の実務では、掛け率以外にも「利益率」「原価」「歩掛」といった多くの用語が登場します。これらは密接に関わっていますが、意味や計算の視点が異なります。
それぞれの違いを正しく理解しておくことは、計算ミスを防ぐだけでなく、協力業者との交渉や社内の利益改善をスムーズに進めるための第一歩となります。

利益率との違い

「掛け率」と「利益率」は混同されやすいですが、何を基準(分母)にするかが異なります。掛け率は「原価に対していくら上乗せするか」という、原価を基準とした指標です。一方、利益率は「売上に対して利益がどれくらいあるか」という、販売価格を基準とした指標です。
例えば、100万円の原価に1.25の掛け率をかけて125万円で見積もった場合、利益額は25万円ですが、利益率は「25÷125」で20%となります。「掛け率20%増し=利益率20%」ではない点に注意が必要です。

原価との違い

原価とは、工事を完成させるために直接必要な費用の合計(直接費用)を指します。具体的には、木材や住宅設備などの材料費、大工や左官などの外注費・労務費などが該当します。掛け率は、この「原価」という土台の上に、会社の維持費(一般管理費)や利益を乗せるための比率です。
つまり、原価は「支出」であり、掛け率は「その支出をどう売上に変換するか」を決める係数という関係性になります。

歩掛との違い

歩掛(ぶがかり)は、ある作業を完了させるために必要な作業員数や時間を数値化したものです。例えば、「1平米の壁を塗るのに何人工(にんく)かかるか」といった作業効率を表します。

歩掛が「現場の生産性」に焦点を当てた指標であるのに対し、掛け率は「金額の調整」に焦点を当てた指標です。
一般的に、労務費は歩掛を用いて算出され、材料費などはメーカーとの掛け率を用いて算出されることが多く、この両方を組み合わせることで正確な見積が完成します。

建設業で掛け率を抑える方法

見積における掛け率の意味とは?_02

原価に、掛け率という一定の割合を掛けることで見積金額を算出できます。そのため、掛け率を抑えることができれば、さらなる利益の確保が可能です。

ここでは、建設業で掛け率を抑える方法について解説します。

取引先と交渉する

取引先と掛け率の交渉をおこなう際には、自社のこれまでの取引実績をアピールしたり、注文数量の大きさにフォーカスしてスケールメリットを訴えたりすることが有効です。

また、今後の取引拡大の可能性を示唆するのも、相手先に検討材料を与えることになります。

相見積を活用する

複数の同業他社から相見積を徴収して、最も良い条件の会社と取引を行うことも重要です。複数の業者から見積を取ることで、競争原理が働きシビアな価格が出やすくなります。

ただし、商品によっては、扱う業者が少なく期待したような成果が上がらないこともあるでしょう。

メーカーとの直接取引

仲介業者を介さず、メーカーと直接取引を行うことで掛け率を抑えることができます。

メーカーとの取引では、一定量の発注量が条件となることも多いですが、小口と大口で発注先をわけるというのも選択肢としてはあるでしょう。

メーカーとの結びつきを強めることは、製品のカスタマイズがスムーズになったり、コアな製品情報やサンプルなどの提供を受けたりできるメリットもあります。

掛け率を抑えて利益を上げるなら「AnyONE」

建設業の見積に適切な掛け率を活用して利益を上げるなら、業務効率化ツール「AnyONE」の導入をおすすめします。

AnyONEはエクセルと似た操作感で、ITツールが苦手な方でも操作方法に迷うことが少ないです。加えてAnyONEは以下の機能にも対応しています。

【AnyONEの機能】

  • 顧客管理
  • 帳票管理
  • 工事管理
  • 物件管理
  • 実行予算管理
  • 支払い管理
  • 請求・入金管理
  • 図面・写真管理
  • アフター・メンテナンス管理

AnyONEは工事にかかわるお金の管理を一括でおこなえるため、現場ごとの利益の推移を簡単に把握できます。予定よりも利益が少ない場合は、積算・見積り・実行予算いずれかの段階に原因があるケースが多いです。

AnyONEを活用すれば、各段階の利益推移を簡単に追えるため、低利益工事・赤字工事となった原因の分析が簡単に行えることも人気の理由となっています。

掛け率に関してよくある質問

建設実務の中で、協力業者や建材メーカーとの会話に登場する「掛け率」という言葉は、その場の文脈によって指し示す内容が異なる場合があります。ここでは、特に質問の多い具体的な数値の意味について分かりやすく解説します。

掛け率40とはどういう意味ですか?

建設業界において「掛け率40」あるいは「40パーセント」という言葉が使われる場合、主に「定価の40%の価格で購入できる」という意味で使われます。

  • 仕入れのケース: 定価10,000円の材料に対し「掛け率40」と言われた場合、仕入れ価格は4,000円になります。
    つまり「6割引き」の状態を指します。
  • 見積作成のケース: まれに原価に対して40%の利益を見込むという意味で使われることがありますが、その場合は「原価に1.4を掛ける(40%アップ)」と表現するのが正確です。

掛け率50パーセントとはどういう意味ですか?

「掛け率50パーセント」は、いわゆる「半掛け(はんがけ)」と呼ばれるもので、定価の半額で取引することを意味します。

  • 計算の仕組み: 定価に対して0.5を乗じた金額です。定価が100万円の設備機器であれば、50万円が卸値となります。
  • 業界の傾向: 住宅設備(キッチンやトイレなど)や建材の取引において、一つの目安として頻繁に登場する数値です。
    ただし、近年は原材料費の高騰により、以前は50%だったものが55%や60%へと引き上げられるケース(実質の値上げ)も増えています。

まとめ

掛け率の仕組みを正しく理解し、取引先との交渉や相見積の活用によって仕入れコストを抑えることができれば、現場の利益率は確実に向上します。
しかし、いくら適切な掛け率を設定しても、その後の原価管理や予算管理が疎かになっては意味がありません。

工務店専用システム「AnyONE(エニワン)」は、見積から実行予算、支払い管理までを一元化することで、現場ごとの利益推移をリアルタイムに可視化します。
「予定していた利益が残らない」「どこで赤字が出たか分からない」といった課題を解決し、確実な利益確保をサポートします。
ミスのない正確な管理体制を築き、利益を最大化したいとお考えの方は、ぜひAnyONEの機能や導入事例をまとめた資料をダウンロードしてみてください。


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記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。

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