【塗装工事】請求書の作り方・書き方|インボイス対応・人工費の計算方法・作成手順を解説
建設業における「工事原価管理」は、利益を守るための最重要テーマです。材料費や人件費、外注費などが複雑に絡み合い、少しのズレでも赤字につながるのが建設業の特徴です。
しかし実際には、会計処理の特殊性や現場からのデータ収集の難しさから、「原価を正しく把握できていない」と悩む工務店は少なくありません。
本記事では、工事原価管理の基本の流れや難しさの背景、利益確保に向けた改善のポイントを解説します。あわせて、効率化を実現するシステム導入のメリットも紹介するので、自社の管理体制を見直すヒントにしてください。
INDEX
建設業の工事原価管理とは、工事を竣工させるために必要な労務費や資材費、外注費などを算出して、コスト削減するための管理を行うことです。
工事原価管理を行うことで、無駄を排除して適正な利益を確保し、事業経営の改善ができます。
工事原価管理は「見積の仮説」を「実績の数字」で検証し、素早く打ち手に変える一連のプロセスです。Excel に数字を溜めるだけでは“管理したつもり”で終わりがち。現場〜経理〜経営が同じ指標で会話できる仕組みに落とし込みましょう。
工事原価管理の基本の流れは、以下のやり方で進められます。
工事を受注する際、材料費・労務費・外注費などを積算して見積原価を作成します。
見積原価をもとに、工事完了までに必要となる費用をさらに精査し、実行予算として設定します。
工事の進行にあわせて、発生した費用を工事原価台帳などに記録します。
見積原価・実行予算・実際原価を比較し、差異が生じた場合はその要因を明確にし、次回以降の見積や実行予算へ反映します。
工事原価管理のポイントは、「見積 → 実行予算 → 実際原価」という流れを明確に区分し、それぞれの数値を定期的に比較・検証することにあります。これにより、工事ごとの採算性を把握し、経営全体の利益改善につなげることができます。
建設業界では、長らく「利益が出にくい」と言われてきました。実際、平均粗利率は25%前後にとどまり、少しのコスト増加で赤字に転落するリスクを抱えています。
さらに近年は資材や労務費の高騰が続き、従来のやり方のままでは利益を守るのが難しい状況です。こうした背景から、工事原価管理の見直しは避けて通れません。
ここでは、まず業界全体の利益率の低さと、資材・人件費の上昇が与える影響を整理します。
【参考】建設業の経営分析(令和4年度)
建設業は粗利率がおよそ25%にとどまり、販管費や金利負担を差し引くと営業利益は一桁%になりやすい構造です。多重下請け・価格競争・工期変更・手戻り・保証対応など、小さな誤差が粗利を直撃します。
だからこそ、単価交渉や工程最適化と同じ重みで、“原価の見える化”と“差異の即時是正”が求められます。
資材や労務費の高騰は、工事を受注する時点の見積では想定しきれないことが多く、工事が進むにつれてコストが膨らんでしまいます。つまり「最初の見積で全部カバーする」のは難しいのです。だからこそ、契約を結ぶ段階で「価格が変動した場合は再見積もりする」といった条件を盛り込んだり、仕入れ先を分散させて価格上昇の影響を和らげる工夫が必要になります。
工事原価管理の目的は、自社のコスト管理の実態を把握し、さらなる利益確保のための施策を練ることです。工事原価管理を行う目的を具体的に解説します。
建設業では、工事を受注すると、粗利益目標額を設定した「工事実行予算書」を作成します。工事実行予算書は、費用金額入りの施工計画書といえるものです。
建設会社は、各工事現場の利益の積上げが会社全体の利益を決めるため、非常に重要な作成書類です。
この予算書で目標としている粗利益額と、実際に進行中の工事で発生している粗利益額の実績との差異を管理していく必要があります。
その差異が許容範囲を超えている場合は、どこに原因があるのか徹底調査し、早急に調整を開始しなければなりません。
予算と実績の差異管理のベースになる実行予算書の作成・承認の責任者は、工事現場の作業所長であるケースが多いです。しかし、実際の実行予算書作成は、現場所長を中心としたチームで行うのが一般的です。
工事費用の予測では、見積段階での歩掛による積算から始まり、現場条件や工法の難易度、特記事項の内容などから検討した精度の高い実行予算書が求められるからです。
担当チームが作成した実行予算書は、さらに各部署で調整が行われ、最終的に作業所長が承認するという流れとなります。
精度の高い実行予算書をベースにした予算と実績の差異管理は、リアルなコストの把握を実現させ、迅速で速効性のある調整を可能にして適正な利益確保に繋がります。
建設業を取り巻く環境は、材料費や人件費の高騰、働き方改革などで厳しさを増しているのが現状です。
このような環境の中で、コストの把握と利益確保を実現させるには、システム導入による効率化が決め手となるでしょう。
そして工事原価管理とほかの業務との連携による、業務全体の効率化を狙うために、自社の独自性に対応できるシステムを選ぶことが求められます。
工事原価管理が難しいとされる理由について、詳しく解説します。
実際に工事原価管理を行う建設業の経理では、一般的な会計処理ではなく、建設業会計を用いています。
建設業会計の勘定科目は以下の7つです。
原価管理においての基礎知識として、頭に入れておきましょう。

建設業の工事では、着工から完成・引き渡しまでの期間が複数の年にまたがることがあります。
そのため、工事の進捗状況に応じた「工事進行基準」を用いて、売上や原価を分割して計上することが認められています。工事進行基準とは、収益や費用を明確にするための基準です。
また、入金が来期になる工事の材料費や外注費などを当期で支払う場合は、「未成工事支出金」として計上します。
未成工事支出金は、一時的に流動資産として記載し、工事が完了した時機に完成工事原価に切り替えます。
一般的な会計での原価は、材料費、労務費、経費の3つの要素で成立します。建設業会計では、これに外注費がプラスされて4つの要素となります。
工事の施工にかかわる業務委託で、一人親方や個人事業主に支払われる費用は外注費に分類されます。
一定の雇用期間が定められている労務外注費は、従業員への賃金と実質変わらないため、外注費ではなく労務費として計上しなければなりません。

出典
国土交通省|公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法および算定例
建設業の工事費用の構成は煩雑です。
「公共建築工事積算基準」では、工事は、直接工事費、共通費、消費税等相当額の3つで構成されると定められています。
共通費とは、共通仮設費、現場管理費、一般管理費の3つに分類される、直接的な作業を伴わない工事費のことです。
共通費には、原価に含むものとそうでないものがあります。例えば、現場作業者や施工管理者の人件費は原価に含まれますが、営業担当者や営業事務は工事原価ではなく本社経費となります。
工事原価管理の基礎となるデータは、各現場の責任者から経理部門の担当者へと共有されることがほとんどです。
経理部門では、この基礎データを、配賦(はいふ)基準をもとに配賦作業して仕訳を行います。配賦とは、複数の現場に共通して発生する費用を一定の基準で各現場に割り当てることです。
経理部門の担当者は、現場ごとに違うフォーマットの基礎データを集約し、配賦作業をすべて手作業でしなければなりません。
複雑で膨大な配賦作業は、経理業務担当者にとって大きな負担となります。
工事原価管理の目的は、自社のコスト管理の実態を把握し、さらなる利益確保のための施策を練ることです。工事原価管理を行う目的を具体的に解説します。
建設業では、工事を受注すると、粗利益目標額を設定した「工事実行予算書」を作成します。工事実行予算書は、費用金額入りの施工計画書といえるものです。
建設会社は、各工事現場の利益の積上げが会社全体の利益を決めるため、非常に重要な作成書類です。
この予算書で目標としている粗利益額と、実際に進行中の工事で発生している粗利益額の実績との差異を管理していく必要があります。
その差異が許容範囲を超えている場合は、どこに原因があるのか徹底調査し、早急に調整を開始しなければなりません。
予算と実績の差異管理のベースになる実行予算書の作成・承認の責任者は、工事現場の作業所長であるケースが多いです。しかし、実際の実行予算書作成は、現場所長を中心としたチームで行うのが一般的です。
工事費用の予測では、見積段階での歩掛による積算から始まり、現場条件や工法の難易度、特記事項の内容などから検討した精度の高い実行予算書が求められるからです。
担当チームが作成した実行予算書は、さらに各部署で調整が行われ、最終的に作業所長が承認するという流れとなります。
精度の高い実行予算書をベースにした予算と実績の差異管理は、リアルなコストの把握を実現させ、迅速で速効性のある調整を可能にして適正な利益確保に繋がります。
建設業を取り巻く環境は、材料費や人件費の高騰、働き方改革などで厳しさを増しているのが現状です。
このような環境の中で、コストの把握と利益確保を実現させるには、システム導入による効率化が決め手となるでしょう。
そして工事原価管理とほかの業務との連携による、業務全体の効率化を狙うために、自社の独自性に対応できるシステムを選ぶことが求められます。

ここでは、システム導入が工事原価管理を含む業務効率化のポイントとなる理由について解説します。
工事原価管理をシステムで行うメリットは、大きく以下の3つに集約できます。
●入力業務の負担軽減|複雑な原価計算を自動化、他業務との一元化も可能
●ヒューマンエラーの削減|計算ミスを防止し帳票作成時の入力ミスも削減
●計算業務の精度向上|実行予算の作成や原価計算の迅速化と精度が向上
これらのメリットは業務の標準化を進めて、属人化を防ぐことにも繋がります。
新しいシステムを導入しようとする時、どんな会社でも多少の混乱や軋轢はありますが、大切なのは会社をより良い方向へ進めるという共通認識をもつことでしょう。
ただ最初は、できる限りシンプルな運用を目指し、段階的に広げていくという配慮は必要です。
以下に、工事原価システム導入のフローをまとめました。
●システムの稼働日を決めて、その日を暫定的なゴールとする
●システム導入のリーダーを選出し、経営サイドは定期的に進捗をチェックする
●システムの稼働後は、社内に運用のためのサポート窓口を設ける
このような丁寧な取り組みは、担当者だけでなく社内全体に一体感を生み出し、業務の効率化により良好な影響を与えます。
ここでは、工事原価管理システムの選び方のポイントについて解説します。
従来からある自社の工事進行基準や原価回収基準に対応した原価管理システムを選ぶことが可能です。入力データは、売上や収益の計上に同期され、年次・月次などで確認可能となります。
会計ソフトに反映できるシステムを選べば、計上基準が混在した場合の売掛金や収益の把握もスムーズにできます。
日報管理や帳票出力は、日々の工事原価管理において重要な要素となります。
日報の入力時に原価や労務費を反映させたい時は、日報管理機能のあるシステムを選べば、自社の日報運用に合わせてカスタマイズできます。
工事台帳などの帳票出力が、どの程度まで可能か帳票の見やすさはどうかなどのチェックも可能です。
工事原価管理をシステムは、連携できる業務で以下の3つにわけることができます。
●発注や支払い、請求まで管理できるタイプ
●顧客管理や案件情報、経営改善まで支援するタイプ
●会計機能を搭載し、会計処理や仕訳なども行えるタイプ
また、クラウド型とインストール型があるため、自社のネットワーク環境に合わせて選ぶ必要があります。
外注費と労務外注費を明確に区別し、外注費を原価要素に付加しているシステムを選びましょう。外注費と労務外注費の処理に迷うことがなくなります。
労務外注費は、材料を自社で準備して施工を依頼した場合と、人材不足で労務の応援を依頼した場合の費用です。
システムのサポート体制の充実度は、提供会社で大きく異なります。導入から運用まで一貫したサポートがあることを見極めましょう。
運用改善のための相談がきるか、使い方の詳しい説明を継続して受けられるか、無償のサポート期間はどれくらいかなどのチェックが判断材料となります。
より詳しく工事原価管理システムの選び方を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
工事完了後や決算時に無駄なコストや赤字を確認できても、即時的な対策で対処することはできません。
工事原価管理をシステムで行えば、工事原価の詳細をリアルタイムで把握・調整しやすくなります。
システムを活用すれば、ほかの業務との連携も容易になるため、会社全体のコスト管理の可視化にも大きく貢献します。
工事原価管理システムなら、業務効率化ツール「AnyONE」がおすすめです。
AnyONEはエクセルと似た操作感を持っており、ITツールが苦手な方でも操作方法に迷うことが少ないです。加えてAnyONEは以下の機能にも対応しています。
AnyONEは工事に関わるお金の管理を一括でおこなえるため、現場ごとの利益の推移を簡単に把握できます。予定よりも利益が少ない場合は、積算・見積り・実行予算いずれかの段階に原因があるケースが多いです。
AnyONEを活用すれば、各段階の利益推移を簡単に追えるため、低利益工事・赤字工事となった原因の分析が簡単に行えるのも人気の理由となっています。
和歌山県橋本市の株式会社ベストインテリア(Next Design Home)では、原価を確認せず工事を進めてしまい、完工後に「思ったほど利益が残らない」という課題を抱えていました。
AnyONE導入後は利益率をリアルタイムに把握できるようになり、全社員のコスト意識が向上。利益率は約15%から20%へと改善し、会社全体で5%の向上を実現しました。
さらに、見積作成時間も従来の半分以下に短縮され、業務効率化と利益管理の両立が可能になっています。
詳しくはAnyONE導入事例「利益率をリアルタイムで把握できるようになり、5%の向上が実現しました。」をご覧ください。
日々現場から寄せられる疑問に対して、実務目線で簡潔に回答します。基本を誤解しないことが、差異の早期発見と是正の近道です。
建設業会計における工事原価は、一般的に次の4要素で構成します。
ここに発注書・納品書・請求書・日報を紐づけ、費目別に予定実績を照合します。
原則、工事原価に一般管理費(本社経費)は含みません。 工事原価は現場に直接紐づく費用(材料・労務・外注・現場経費)で構成されます。
一方、一般管理費は本社の人件費・本社家賃・広告費・管理部門費など、個別現場に直結しない費用で、販管費として区分します。
ただし、実務上は意思決定のために、現場共通費や一部の間接費を合理的な配賦基準(工事金額・工期・工数など)で按分し、案件別の採算を“管理目的で”試算することがあります。会計処理と管理会計の線引きを明確にし、報告書で混在させないことが重要です。
工事原価管理は、建設業の利益確保に直結する経営課題です。原価を把握して差異を分析し、改善につなげることで、はじめて安定した利益構造を築くことができます。
とはいえ、従来のエクセルや紙ベースでは情報の遅れや属人化を招き、赤字工事の温床となりがちです。効率化には、見積から実行予算、発注、請求までを一元化できるシステムの導入が効果的です。
工務店向け業務効率化システムAnyONEを活用すれば、リアルタイムで利益を把握し、現場と経営の意思決定をつなげることが可能です。利益率改善を目指す工務店は、今こそ仕組みの見直しを進めましょう。
記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。
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