建設業における適切な利益率は?計算方法と改善策を徹底解説

建設業における適切な利益率は?計算方法と改善策を徹底解説

建設業は利益率が低く「売上高が増加しても経営が楽にならない」と悩んでいる経営者の方が多いです。従来、建設業は「売上高至上主義」で売上高の増加・維持のためなら、赤字でも工事を受注する文化がありました。
そのため「赤字・低利益工事しか受注できない状況を変えたい」と考えていても、何も対策できていない会社が多いです。

今回は、建設業の利益率が低い理由と利益率を高める方法を解説します。

 

建設業における利益率とは?

建設業における利益率とは、会社の売上に対してどれだけの利益が含まれているかを示す重要な指標です。
まずは、なぜ利益率の把握が必要なのか、その目的と得られる効果を以下の表に整理します。

利益率を把握する目的 経営にもたらす具体的な効果
資金繰りの安定化 手元の現金を確保し、黒字倒産のリスクを回避できる
無駄なコストの発見 どの現場で余分な経費がかかっているかを特定できる
経営判断の基準作り 受注すべき案件と見送るべき案件の判断基準が明確になる

 

経営の安定化に直結

売上高がどれほど大きくても、利益率が低ければ手元に残る資金は乏しくなります。
材料費や人件費などの支払いが先行する建設業において、この状態は最悪の場合、黒字倒産を引き起こしかねません。
仮に年間売上が1億円あったとしても、工事原価や経費に9,900万円を費やしていれば残る利益はわずか100万円です。
この状況で機材トラブルのような不測の事態が起きれば、資金繰りはたちまち行き詰まってしまうでしょう。

従業員へ安定して給与を支払い、会社を守り抜くためには、単なる売上規模の追求にとどまらず、利益率を正確に把握し高く保つことが生命線となります。

利益計算が複雑な背景

建設業における利益計算の複雑さは、他業界と比べてひとつの案件にかかる期間が長いという特殊な事情に起因します。着工から完了まで数年を要するケースも珍しくありません。
商品を販売したその日に売上と原価が確定する一般的な小売業などとは異なり、建設業では工事の進捗度合いに応じて売上を計上する「工事進行基準」が適用される場面が多く見られます。
その結果として原価の支払いと売上入金のタイミングに大きなズレが生じ、現時点での正確な利益が見えにくくなってしまうのです。

この業界特有の構造的な違いこそが、利益計算を難しくしている最大の要因と言えます。

建設業の利益率の平均と目安は?

自社の利益率が適正かどうかを判断するためには、業界全体の平均的な水準を知っておく必要があります。建設業における利益率の目安を以下の表に示します。

比較対象 目安となる数値
建設業全体の粗利率平均 約26.5%
一般的な目安 20%〜30%の範囲

 

粗利率の平均は約26.5%

一般財団法人建設業情報管理センターのデータによると、建設業全体の平均的な粗利率(売上高総利益率)は約26.5%です。
土木や建築など扱う専門分野による多少の変動はあるものの、まずはこの平均値を一つの基準として自社の立ち位置を確認しましょう。
もし直近の粗利率が15%程度に留まっている場合、原価過多や受注単価の低さが疑われます。
自社の現状を客観的に評価し、改善点を見出すための第一歩として、平均値との比較は非常に有効な手段となります。

参考:建設業の経営分析(令和6年度)|一般財団法人建設業情報管理センター

理想的な水準の考え方

もっとも、平均値はあくまで参考指標にすぎません。
自社にとって理想的な利益率とは、すべての必要経費を差し引いたうえで、将来への投資資金を十分に確保できる水準を指します。本社の家賃や事務スタッフの給与など、固定費の負担が大きい企業では、平均以上の30%近い利益率が求められるケースも珍しくないでしょう。
抱える固定費や目指す成長率は企業ごとに大きく異なるため、一律の数字にとらわれず、一般的な目安とされる20%から30%の範囲のなかで自社の事業構造に即した目標数値を定めることが重要です。

建設業で注視すべき利益率と計算方法は?

経営状態を正確に把握するためには、一つの利益率だけを見るのではなく、目的に応じて複数の指標を使い分ける必要があります。建設業で重要となる5つの利益率と、その計算式を以下の表にまとめます。

利益率の種類 計算式
売上高総利益率 (売上総利益÷売上高)×100
売上高営業利益率 (営業利益÷売上高)×100
売上高経常利益率 (経常利益÷売上高)×100
自己資本経常利益率 (経常利益÷自己資本)×100
総資本経常利益率 (経常利益÷総資本)×100

 

売上高総利益率の算出

一般的に「粗利率」と呼ばれる売上高総利益率は、売上高から工事原価を差し引いた割合を示しており、工事そのものの収益性を測る最も基本的な指標です。
1000万円の工事に対して原価が750万円かかった場合、粗利は250万円となり、売上高総利益率は25%と算出されます。
この数値を確認すれば、現場単位でしっかりと利益が出ているかを即座に判断できるでしょう。

売上高営業利益率の算出

売上高営業利益率は、粗利益から販売費および一般管理費を差し引いた、本業における利益の割合を表すものです。
現場で十分な利益を出せていたとしても、本社スタッフの人件費やオフィス家賃、広告宣伝費といった経費が膨らみすぎていれば、この数値は低下してしまいます。
逆に言えば、売上高営業利益率の高さは、会社全体として無駄なく効率的に稼ぐ「営業力」を備えている証拠と言えます。

売上高経常利益率の算出

営業利益に対して、本業以外の収益や費用を加味したものが売上高経常利益率です。
ここには、不動産賃貸収入などの営業外収益や、銀行借入金に対する支払利息などが含まれます。仮に本業の営業利益が高水準であっても、借入金の返済利息が莫大であれば経常利益率は大きく落ち込むため注意が必要です。
資金調達の状況も含め、会社が持つ総合的な収益力を正確に把握するうえで、この指標の確認は欠かせません。

自己資本経常利益率の算出

株主や経営者自身が出資した資本に対し、どれだけの利益を生み出したかを示すのが自己資本経常利益率です。銀行からの借入金といった他人資本を含めず、純粋な自己資金の運用効率を評価する際に活用されます。
少ない自己資金で大きな利益を上げるほど比率が高まる性質を持つため、出資者へ投資効率の良さをアピールするための重要な指標として機能します。

総資本経常利益率の算出

総資本経常利益率は、借入金を含めた会社の総資産を投じて、どれだけの利益を上げたかを示す指標です。遊休地や稼働していない重機などを大量に抱えていると、資産規模に対して利益が伴わず、結果としてこの比率は低下してしまいます。
会社の資産全体を無駄なく最大限に活かして事業を行えているか、経営の全体的な効率性を判断するうえで非常に役立つ基準となります。

建設業の利益率が低下する主な原因は?

建設業で利益率が低下する背景には、多重下請け構造やどんぶり勘定といった体制の問題が潜んでいます。
さらに、昨今の資材価格や人件費の高騰、他社との過度な価格競争、工期遅延による予期せぬ追加費用といった要因も利益を大きく圧迫しています。
ここでは、建設業の利益率が低下する主な原因について解説します。

下請け構造

建設業は、工事内容の高度化に伴う専門化・分業化に対応するため、多重下請け構造です。多重下請け構造は合理的な面もあります。しかし、中間業者が多く入るため、下位下請け業者の取り分が減ってしまうことが問題です。

国土交通省は、多重下請け構造の問題について次の指摘をしています。
『下請として中間段階に介在する企業数が増えることにより、中間段階でこれらの企業に利益として受け取られる対価が増加するため、下位下請の施 工の対価の減少や、労務費へのしわ寄せのおそれが生じる。』
【引用】重層下請構造の改善に向けた 取組について-国土交通省

下請け、特に下位下請けの仕事がメインになっている場合は、施主との直接取引など中間業者を挟まずに工事を受注する方法を考えましょう。

資材価格や人件費の高騰

昨今の社会情勢により、建築資材の価格や燃料費が急激に上昇しており、業界全体に及ぶ深刻な人手不足から職人の人件費も高騰傾向にあります。数ヶ月前に提出した見積もり金額でそのまま契約を進め、いざ着工の段階になって鉄骨や木材などの仕入れ価格が跳ね上がってしまうケースも決して珍しくありません。外部環境の変化によるコスト増をあらかじめ見込んでおかなければ、想定していた利益は簡単に吹き飛んでしまいます。
見積もり作成時から工事完了までに原価が変動するリスクを、常に考慮しておくことが重要です。

競合他社との価格競争

仕事を確実に受注したい一心で、他社より安い見積もりを提示してしまうことはないでしょうか。ひとたび価格競争に巻き込まれれば、本来確保すべき適正な利益を自ら削って契約を結ぶことになります。相見積もりを勝ち抜くために利益を限界まで削った現場は、わずかなミスや手直しが発生しただけで即座に赤字へと転落しかねません。
このような安値受注が常態化すれば、どれだけ多くの現場をこなしても会社に利益が蓄積されないという、深刻な悪循環に陥ってしまうでしょう。

工期遅延による追加費用

天候不良や資材の搬入遅れ、あるいは現場での予期せぬトラブルなど、さまざまな要因で工期が延びるリスクは常に潜んでいます。
当然ながら工期が延長されれば、それに伴って人件費や機材のリース代といった追加費用が発生します。仮に予定より工事が1週間長引けば、職人の日当や仮設トイレのレンタル費用などが余分に発生することは想像に難くありません。
事前に見込んでいなかった見えないコストが原価を押し上げ、結果として最終的な利益率を大きく引き下げる原因となってしまうのです。

どんぶり勘定での原価管理

材料費や外注費を細かく記録せず、感覚だけに頼って管理する「どんぶり勘定」も危険な要因の一つです。
このような状態では、どの工事でどれほどの利益が出ているのか、あるいは赤字に陥っているのかをリアルタイムで正確に把握できません。工事がすべて完了し、請求書をまとめて集計した段階で初めて赤字に気付くといった事態も起こり得ます。
無駄な支出が見過ごされやすい管理体制そのものが、会社全体の利益率を悪化させる最大の要因と言っても過言ではないでしょう。

建設業の利益率を向上させる方法は?

建設業で利益率を向上させるためには、日々の徹底した原価管理による赤字の予防が第一歩です。さらに、外注費や材料費のコスト見直し、付加価値をアピールした適正価格での受注交渉、そしてITツール導入による業務効率化も重要な鍵となります。
ここでは、建設業の利益率を向上させる具体的な方法について解説します。

利益率を向上させる改善策 期待される具体的な効果
徹底した原価管理の実施 赤字の兆候を早期に発見し、損失を最小限に食い止める
外注費や材料費の見直し 原価そのものを引き下げ、手元に残る利益額を増やす
受注単価や交渉力の強化 適正価格での受注を実現し、無理のない利益を確保する
ITツールの導入と効率化 事務作業の時間を短縮し、見えない人件費を削減する

 

徹底した原価管理の実施

利益率を向上させるための第一歩は、現場ごとの原価を正確に把握し、徹底して管理することに尽きます。材料費、労務費、外注費、経費の4要素を細かく記録したうえで、実行予算と実際の費用にズレが生じていないか定期的に確認しなければなりません。月1回にとどまらず、週1回のペースで予算の消化状況をチェックする仕組みを構築できれば理想的でしょう。
こまめな確認によって材料の使いすぎといった無駄を早期に発見できれば、赤字に転落する前に対策を講じることが可能となります。

外注費や材料費の見直し

原価の大部分を占める外注費や材料費の定期的な見直しも、利益確保に直結する重要な施策です。複数の業者から相見積もりを取って適正価格を比較検討し、現場ごとに点在していた資材発注をまとめて単価交渉を行うなどの工夫が求められます。長年の付き合いがある協力業者であっても例外とはせず、現在の市場価格と照らし合わせて定期的に取引条件を協議する場を設けましょう。
聖域を設けずにコストの構造を洗い直す姿勢こそが、利益率改善の大きな余地を生み出します。

受注単価や交渉力の強化

自社の技術力や過去の実績を顧客へ的確に伝え、適正価格で受注するための交渉力も欠かせません。安易な値引き要求に応じるのではなく、品質の高さやアフター対応の迅速さといった、価格以外の付加価値を積極的にアピールしていく必要があります。「他社より少し高いものの、安全管理が徹底されていて安心して任せられる」と顧客に納得してもらえるような、説得力のある提案書を作り込みましょう。
こうした積み重ねで確かな信頼を獲得できれば、利益率の高い案件でも適正な価格で契約を結べるようになります。

ITツールの導入と効率化

現場管理や経理業務へのITツール導入は、業務効率を劇的に向上させる有効な手段です。
原価管理ソフトやクラウド型の施工管理アプリを活用すれば、スマートフォンからいつでも現場の進捗や予算状況をリアルタイムで把握できるようになります。これまで現場から事務所に戻って作成していた日報や発注書も、移動中や現場でのスキマ時間で完結させられるでしょう。
事務作業に要する時間が大幅に削減される結果として、残業代などの見えざるコストの圧縮に直結していくのです。

正確な原価管理にはAnyONE!

お金の流れを把握するためには、正確な原価管理が欠かせません。正確な原価管理には「AnyONE」の導入をおすすめします。AnyONEは、見積り作成や実行予算作成、原価・発注管理など工事に関するお金の流れを一元管理可能です。

またAnyONEは導入企業数が2,700社を超えており、豊富な実績を持っています。さらに継続率が99.4%と、一度導入すると手放せないシステムといえるでしょう。

【AnyONEの機能】

上記のような、工務店やリフォーム会社の業務全般をおこなえるため、部署の垣根を超えて使用できる業務管理システムとなっています。実際にAnyONEを導入した会社の中には、粗利率が「18%から25%」にアップした会社もあり、利益率を改善したい会社にぴったりのシステムです。

操作性はエクセルと近く、ITツールが苦手な方でも簡単に操作できるような設計となっています。エクセルの操作経験があれば迷わず使用できるでしょう。さらに、不明点や疑問点は専門スタッフに電話やメールで確認できるため、使い方で迷うことはありません。

まとめ

この記事で解説した、建設業の利益率を高めるための重要なポイントをまとめます。

  • 経営の安定と黒字倒産を防ぐため、売上高の追求だけでなく利益率の正確な把握が不可欠
  • 建設業全体の粗利率平均である約26.5%(目安20〜30%)を基準に、自社の現状を客観的に評価する
  • 多重下請け構造や資材高騰、どんぶり勘定といった利益率を低下させる原因に対策を打つ
  • 利益率を向上させるには、原価管理の徹底、外注費・材料費の見直し、適正価格での受注交渉が重要
  • 業務効率化と正確な原価把握を実現するために、専用のITツールや業務管理システムを活用する

まずは自社の利益率と原価の状況を正確に可視化し、適正な利益を確保できる強い経営体質を作り上げましょう。加えて、ITツールによる情報の一元管理も効果的です。ITのツールを検討する際は複数ツールの比較検討が欠かせません。
下記は各サービスの機能比較をまとめているため、サービス検討時の参考としてください。


監修:AnyONE編集部
AnyONE編集部は、建設業界向け業務支援システム「AnyONE」を運営する株式会社エニワンの編集チームです。
公的資料や業界情報をもとに、建設業に関する基礎知識や実務に役立つ情報を、わかりやすく整理・解説しています。


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