【建設業】法定福利費の算出方法とは?計算式や料率・見積書への記載方法
工事の利益率を意識することは、建設事業を成功させる最適の手段です。
そして建設事業において工事利益を出すには工事原価を抑えることが必要です。
しかし、多くの建設会社は手許資金が厳しい状況にあります。
適正な工事原価を実現し、得るべき工事利益を確保するにはどうすればよいかを解説します。
INDEX
建設業における工事の利益率とは、売り上げや資産に対して利益が占める割合です。利益を売り上げで割れば算出できます。
また工事の利益率には3つの種類があります。
・売上高総利益率(粗利益率)
・売上高営業利益率
・売上高経常利益率
1つずつ計算方法について説明します。
売上総利益率(粗利益率)とは、売上高の中で粗利益率の占める割合を表します。
粗利益や粗利益率は略して「粗利」と呼ばれます。
<計算式>
粗利益率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100%
建設業における赤字・黒字を決める要素は粗利益率であるといわれており、利益率を上げたいと考えている場合は、粗利益率を向上させることが大切です。
建設業界における粗利益とは、完成工事高から工事原価を差し引いたものです。
粗利益は、決算書上では「売上総利益」と記載されています。また、一般的に売上高を示す完成工事高は「完工高」と略すことがあります。工事原価は、「原価」と略します。
<計算式>
粗利益(売上総利益)= 完成工事高(売上高)-工事原価(売上原価)
粗利益率は、売上高の中で粗利益率の占める割合を表します。
粗利益や粗利益率は略して「粗利」と呼ばれます。
<計算式>
粗利益率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100%
売上高営業利益率とは売上高に対して、営業利益が占める割合のことです。売上高から売上原価や販売費、管理費などを差し引いた金額を営業利益とし、以下の計算式で算出します。
<計算式>
営業利益÷売上高
営業利益が高い企業ほどコストを削減して、効率よく経営できているという指標となります。
売上高経常利益率とは、経常利益が売上高のどの程度の割合を占めるかどうかの指標です。
そもそも経常利益とは、メインの事業以外で得た収入も含めた利益全ての合計を意味します。
たとえば建設事業者が工事だけでなく、不動産運用もしておりその利益が出ている場合は、工事で出た利益と不動産運用による利益も含めた金額が経常利益です。
<計算式>
経常利益÷売上高
経常利益が高い企業は、収益率が高く資金力が高い企業と判断できます。
以上のように建設事業の利益率は、使用する指標によって異なります。建設業者が工事の利益率をあげたいときはまず、粗利益率を意識すると良いでしょう。
建設業における工事で得られる利益率の平均値は、概ね20%といわれています。(【参考】「建設業の経営分析(令和2年度)」|一般財団法人 建設業情報管理センター)
もちろん企業規模によって、14%程度から30%程度まで利益率の幅があるものの、建設業全体の利益率は20%が平均です。
もしも自社の利益率が20%を下回っている場合はまず20%を目標として、工事原価を下げる工夫が必要となります。20%を上回っている場合でも安心せず、さらに上を目指して工事原価を下げ、営業利益を増やす工夫が大切です。
建設業の利益率が低くなる要因として、以下のようなものが挙げられます。
2020年のウクライナ問題を皮切りに、燃料価格が高騰。それに伴い、建設の要となる資材も高騰しています。原価が上がれば建設コストが上がるのが常ですが、迂闊に値上げをすると他社との価格競争に負ける恐れがあることから、競争力の低い中小の建設事業者は価格を据え置きで建設工事を請け負っています。
それに反比例にするように、外注費用は高騰しています。建設業界は慢性的な人手不足を抱えていましたが、近年高齢化や若者の離職が進み、さらに人手が不足している状態です。工事に欠かせない職員の雇用に高額な費用がかかることから、原価がさらに高騰しています。
これらの問題から建設業は利益率の確保が難しく、20%を切る事業者も増えています。
工事の利益率が20%を下回る企業は、以下3つの点に思い当たる節がないか確認しましょう。
工事の利益率が低い企業にありがちな失敗が、売上高だけにとらわれて工事原価をおそろかにすることです。
仮に売上高が高くても、工事原価が著しく高い場合は粗利益率は下がります。
工事原価管理を適切に行っておらず、気がついたら原価が高くなって利益が残らないような状態になっていないか確認しましょう。
建設業は下請け構造が非常に複雑であり、1つの工事に多くの建設事業者が関わります。
当然関わった事業者にマージンが発生するため、孫請け企業が受け取れる金額は非常に少なく、利益率が低くなるケースがあります。
中間業者をなるべく挟まずに工事を発注・受注するなどして、中間に支払うマージンを削減しましょう。
建設事業者の中には、資金の流れを曖昧にしか把握していない企業があります。お金の流れを日々把握していないため、気がついたら利益がほぼ残らないという自体になってしまいます。
基本的に建設事業者は、以下のお金の流れを逐次チェックしておかなければなりません。
・実行予算作成
・原価管理
・発注管理
・入出金管理
完成工事高を増やすか完成工事原価を減らすことが必要です。
しかし、やみくもに工事原価を減らせば良いというわけではありません。
建設業は下請けなしでは成り立たない事業です。つまり、下請け業者と適正な価格で取引をし、良好な関係を築くことも重要です。下請け業者と協力して継続的に工事を行いながら粗利益も上げるには工夫して工事原価を下げる必要があります。
粗利益率をあらかじめ設定した見積り額の計算方法は注意が必要です。
「粗利益率」と同様に、売上高がすでに決まっている場合の粗利益は下記の計算方法で求められます。
粗利益率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100%
ただし、そもそも粗利益を確保するには見積りの段階で粗利益を設定する必要があります。
工事の見積り段階で、原価から利益を確保して見積り額を算出したい場合は下記の計算式で粗利益を算出します。
「原価 ×(100 + 粗利益)%」と計算しないように注意しましょう。
▼正しい計算方法
見積額 = 原価 ÷ 原価率× 100%
「原価 ×(100 + 粗利益)%」と計算しないように注意しましょう。
例えば、原価100万円の工事に対して20%の粗利益率を確保したい場合、正しい見積り額の計算は下記です。
100 ÷ (100 − 20)% = 125万円
▼間違った計算方法
「原価に20%乗せる」というイメージで計算してしまった場合
100 × 1.2 = 120万円
となり、5万円損したことになります。
原価1,000万円だった場合は50万円も損することとなってしまいます。
原価に「粗利益を○%乗せる」というイメージで「原価 ×(100+粗利益)%」と掛けるのではなく、売上高の「○%の利益を取る」というイメージで「原価 ÷ 原価率 × 100%」という計算にしましょう。
粗利益率の設定はあくまで、売上高が基準です。
工事原価を減らすには、まず固定費を削減する方法があります。
固定費の削減方法には人件費の削減が近道ですが、労働集約的な側面が強い建設業では、人件費の削減は労働力を低下させ、やがて事業の衰退につながります。
人件費削減よりも、一人あたりの作業量の増力化や効率的な人員配置を行い、正しく原価削減を行いましょう。
変動費の削減策には、材料を安く用意する方法があります。ただし、自社都合で発注先に一方的に低価格での提供を要求することは難しいです。
また、原価削減を優先しすぎる余り低品質になってしまう恐れもあります。
修正費用で余計に原価の高騰につながりやすいため、品質と価格のバランスを適切に保って原価管理を行いましょう。
下請け業者で成り立つ事業で限界利益率を上げるためには、工事原価管理をしっかりと行える実行予算書の作成がおすすめです。
実行予算書とは、工事受注時に確保すべき目標利益を設定し、工事原価と比較して差異の原因を分析する表です。
実行予算書の運用の目的は下記の3点です。作成・運用する際は意識しておきましょう。
1. 利益目標の設定と利益管理
2. 実績比較による原価管理
3. 工事実行責任の明確化
実行予算の策定は下記の手順を参考に行います。建設会社の利益計画の基礎資料となるため、自社の作成方法や承認のプロセスを確立させる必要があります。
1. 実行予算書作成チームの編成、作成担当者の設定
2. 受注した工事の概要を整理
3. 「見積り書」からの組み替えをする
4. 実行予算書の案を関係部署に回し、必要な調整をする
5. 実行予算を最終審査する
下記は、工事施工中に実行予算書を運用する中で意識すべきことのチェックリストです。
活用して効果的な原価管理を行いましょう。
1. 現状把握
予算に対する進捗を確認できているか
進捗状況をもとに今後の予測を立てているか
詳細データまで踏み込んだ問題点の調査を行えているか
単なる結果報告用の資料になっていないか
2. 問題の明確化
必要な切り口から問題点を分析できているか
問題点の表現は抽象的にせず、「貨幣価値」で表現できているか
3. 改善手段の発見・実行
スピーディーに改善策を実行できているか
現状把握や問題の可視化は、早めに措置を講じることができ、損失を減らせます。
限界利益率を上げるための工事原価管理では、現況把握がタイムリーにできないと効果が薄くなります。義務として行う工事原価計算や工事原価管理は、限界利益率を上げる側面から考えると殆ど意味がありません。
建設業はもともと利益率が低い業界といわれていますが、徹底した原価管理でコストを削減して、利益率を上げられます。さらに、以下3つの施策の導入で適正価格で工事を受注し、無駄を省いて自社に利益を多く残せるはずです。
工事の利益率を上げる方法については工務店の利益率を上げるには?必要な準備と4つの施策もご覧ください。
建設事業者が適正な利益率を得るには、適正価格での工事請負が必要です。価格競争を気にして安価な価格で建設工事を請け負っていては、従業員への適正な報酬も支払えず、待遇改善も見込めません。この状態が継続すれば将来的には、建設業界は更なる人手不足へ陥るでしょう。
建設業界の状況を打破するには、適正価格での工事受注が必要です。建設資材の高騰、人件費の高騰などの理由をきちんと伝えれば、取引先も理解を示してくれるはずです。状況に応じた値上げは致し方ない部分もあるため、無理に金額を下げずに適正な価格で工事を受注しましょう。
値上げによる集客リスクが心配なら、付加価値をつけての集客を実施しましょう。建設工事における付加価値とは、アフター管理の徹底や技術力の向上、施工品質の改善です。他社よりもアフター管理を充実させたり、新しい工法を取り入れる、施工管理の技術向上で施工品質管理を徹底するなどして、他社よりも優れた建造物を納品できる体制を整えましょう。
ここまで説明した利益率の維持には、DXが欠かせません。限られた人員で技術力を向上させ、工事品質を今以上に向上させることは困難です。そこでDXで現場の作業効率をあげて、余剰の時間を付加価値を高める業務へ集中させる体制を構築します。
たとえば、ウェアラブルカメラの導入で遠隔臨場の体制が構築できれば、施工管理の移動時間や着替えの時間を削減できます。施工管理者は浮いた時間を品質管理に回したり、原価管理を徹底できるでしょう。
工事の利益確保に重要な役割を果たす原価管理をできる限り正確に行うためには、工事管理ができるシステムの導入がおすすめです。
特に工務店の業務を効率化するソフト「AnyONE」は、原価管理を行う際の課題解決に役立つ機能がそろっています。
発注管理データとの連携や実行予算との差分管理、発注情報の一元化が可能で、正確に原価管理をすることができます。
工事の利益率で最も重要な粗利益率を上げるためにはしっかりと原価管理を行うことが大切です。
原価管理の方法を意識し正しく管理することで、関係者全員が気持ち良く工事を進行でき、計画利益も上げることができます。また、工事原価管理システムの導入は、正確にかつ効率的に利益率の改善につなげられます。
工事原価管理システムには、サービスごとに異なる機能が備わってます。
それぞれの機能を一覧でまとめたページを以下に用意しているため、検討の参考にされてはいかがでしょうか。
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