建設プロジェクトを進める上で、「設計図書」という言葉を耳にしない日はないでしょう。
しかし、特に業界に入ったばかりの方にとっては、「設計図書とは具体的に何を指すのか」「設計図とは違うのか」など、疑問に思う点も多いかもしれません。
設計図書は、建物を正確かつ安全に建てるための全ての情報がまとめられた、工事に欠かせない書類群です。
この記事では、設計図書の基本的な定義から、それを構成する各種書類の役割、そして法律で定められた保管期間に至るまで、建設業務の基礎となる知識を分かりやすく解説していきます。
INDEX
設計図書は、建設工事の全ての工程における基準となる、極めて重要な書類です。その内容を正確に理解することが、品質の高い建物を完成させるための第一歩となります。
まずは、設計図書の基本的な定義と、それが担う役割について確認しましょう。
| 役割 | 内容 | 主な目的 |
| 契約内容の明示 | 発注者の要求と受注者の業務範囲を文書化する | 関係者間の認識齟齬を防止し、トラブルを未然に防ぐ |
| 工事関係者への情報伝達 | 全ての作業員が共通の仕様・品質で作業を行うための基準 | 品質の均一化と、施工プロセスの円滑化 |
一般的に「設計図」と聞くと、建物の間取りや形が描かれた図面をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、「設計図書」は、その設計図に加えて、工事の細かなルールや使用する材料などを定めた「仕様書」、構造の安全性を証明する「構造計算書」など、工事に必要な複数の書類をまとめたもの一式の総称です。
つまり、「設計図」は「設計図書」を構成する要素の一つということになります。

これらの書類が揃って初めて、施工者は建物の全体像から細部に至るまでを正確に把握し、工事を進めることができます。
設計図書には、大きく分けて2つの重要な役割があります。

一つは、「発注者と受注者の間の契約内容を示す」という役割です。発注者(施主)がどのような建物を望んでいるか、そして受注者(建設会社)がそれをどのように実現するかが、設計図書によって明確に定義されます。
これにより、工事の範囲や品質、費用に関する双方の認識のズレを防ぎます。
もう一つの役割は、「工事関係者への情報伝達」です。
現場監督や職人、協力会社のスタッフなど、工事に携わる全ての人が設計図書という共通のルールブックをもとに作業を進めることで、指示のブレや解釈の違いによるミスを防ぎ、プロジェクトを円滑に進行させることができます。
設計図書は、それぞれ異なる役割を持つ複数の書類から構成されています。ここでは、その中でも特に重要となる代表的な書類をピックアップし、それぞれの内容と見方について解説します。
これらの書類が互いに補完し合うことで、一つの建物の情報をすべて把握できます。
| 書類名 | 主な内容 | 役割 |
| 設計図 | 建物の形状、間取り、構造、設備 | 視覚的に建物の全体像と詳細を伝える |
| 仕様書 | 使用材料、施工方法、品質基準 | 図面で表現できない質的な要求事項を定義する |
| 構造計算書 | 地震や風圧に対する安全性の計算 | 建物の構造的な安全性を数学的に証明する |
| 工事費内訳書 | 各工事項目の数量、単価、金額 | 工事費用の透明性を確保し、契約の根拠とする |
設計図は、建物の大きさ、間取り、デザイン、構造、設備などを図形で示したものです。工事の種類に応じて、主に以下の3つに大別されます。
意匠図(いしょうず):建物のデザインや間取り、内外装の仕上げなど、主に見た目に関する情報が描かれています。配置図、平面図、立面図、断面図などが含まれます。
構造図:柱、梁、基礎といった建物の骨組みに関する情報が記載されています。建物の安全性を確保するための根幹となる図面です。
設備図:電気配線、給排水管、空調ダクトなど、建物のライフラインとなる設備の配置や系統が示されています。
仕様書は、設計図だけでは伝えきれない、工事に関する細かな約束事を文章や表でまとめた書類です。例えば、使用する建材のメーカー名や品番、施工方法の具体的な指示、守るべき品質基準などが記載されます。
設計図が建物の「形」を示すものだとすれば、仕様書はその「質」を定めるものと言えるでしょう。大きく「標準仕様書」と「特記仕様書」に分かれ、特記仕様書は標準仕様書よりも優先されるのが一般的です。
構造計算書は、建物が地震や台風、積雪などの外部からの力に対して、構造的に安全であることを数学的に証明する書類です。建物の重さや、かかる力を詳細に計算し、使用する部材がその力に耐えられることを示します。特に一定規模以上の建築物では、建築確認申請の際に提出が義務付けられており、建物の安全性を担保する上で欠かせない書類です。
工事費内訳書は、工事にかかる費用を項目ごとに細かく分類し、数量、単価、金額を一覧にした書類です。見積書や請求書の根拠となり、どのような工事にどれくらいの費用がかかるのかを明確にします。これにより、発注者は費用の妥当性を確認でき、受注者は工事の原価管理を行う上での重要な資料となります。
建設プロジェクトを進める中で、設計図に書かれている内容と、仕様書に記載されている内容に食い違い(不整合)が見つかることがあります。
このような場合、どちらの指示に従って工事を進めるべきなのでしょうか。これは、品質やコストに直接関わる重要な問題です。
設計図書内の書類の優先順位は、法律で一律に定められているわけではありません。一般的には、工事請負契約を結ぶ際の「工事請負契約約款」の中で、書類間の優先順位が規定されています。
多くの標準的な契約約款では、以下のような順位が定められています。
1.質問回答書
2.特記仕様書
3.設計図
4.標準仕様書
ただし、これはあくまで一般的な例であり、契約内容によって異なる場合があるため、必ず自身のプロジェクトの契約約款を確認することが重要です。
現場で図面と仕様書の不整合に気づいた際は、自己判断で工事を進めてはいけません。
必ず工事監理者や発注者に報告し、どちらの指示が正しいのかを正式に確認する必要があります。
この確認作業を怠ると、後からやり直し工事(手戻り)が発生し、工期やコストに大きな影響を与えてしまう可能性があります。疑義が生じた際は、速やかに書面で質問を提出し、回答を得てから作業を再開するというプロセスを徹底することが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
建設現場では、設計図書の他に「施工図」という図面も頻繁に用いられます。この二つは混同されがちですが、その目的と作成者において明確な違いがあります。
この違いを理解することは、施工管理業務をスムーズに進める上で不可欠です。
| 設計図書(の中の設計図) | 施工図 | |
| 作成者 | 設計者(建築士事務所など) | 施工者(ゼネコン、サブコンなど) |
| 目的 | 建物の仕様・性能を定め、発注者の承認を得る | 実際に作業する職人への指示、品質の確保 |
| 内容 | 基本的な寸法、仕様、デザイン | 詳細な納まり、製作寸法、施工手順 |
| 役割 | 契約の基準、建築確認申請 | 現場での作業指示、関係者との合意形成 |
最も大きな違いは、設計図書が主に「設計者」によって作成され、「建物を建てるための基本的な仕様や要求」を示すものであるのに対し、施工図は「施工者(建設会社)」が作成し、「実際に建物をどのように作るか」という具体的な施工方法を示すものである点です。
設計図書は、いわば発注者からの「要求仕様書」であり、建築確認申請などにも用いられます。
一方、施工図は、その要求を実現するために、現場の職人が作業できるよう、より詳細な寸法や納まり、部材の取り付け方法などを描いた「作業指示書」と言えます。
設計図だけでは、実際の工事を行うには情報が不足していることがほとんどです。
例えば、壁の中に通す配管や電気配線が互いにぶつからないかといった詳細な調整や、鉄骨の継手部分の具体的な寸法などは、設計図には描かれていません。
そのため、施工者が設計図書をもとに、各種専門工事業者と調整しながら、実際に製作・施工が可能なように詳細情報を描き加えた施工図を作成する必要があるのです。
完成した建物の維持管理や将来の改修に備え、設計図書は適切に保管しておく必要があります。この保管期間については、建築士法によって定められており、設計者には法的な義務が課せられています。
建築士法第24条の4第2項により、建築士事務所の開設者は、作成した設計図書(のうち、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図など)を、作成した日から15年間保管することが義務付けられています。これは、建物の安全性や適法性を後からでも確認できるようにするための重要な規定です。発注者側(施主)に法的な保管義務はありませんが、建物の資産価値を維持し、将来のリフォームや売却をスムーズに行うためにも、引き渡された設計図書は大切に保管しておくべきです。
設計図書を長期間保管しておくことには、法的な義務を果たす以外にも多くのメリットがあります。
例えば、数十年後に建物の増改築や大規模な修繕を行う際、設計図書がなければ壁の中の柱の位置や配管のルートが分からず、工事が難航する可能性があります。また、建物を売買する際には、設計図書の有無がその建物の信頼性を示す一つの指標となり、査定額に影響を与えることもあります。
将来のあらゆる場面を想定し、いつでも参照できるよう適切に管理することが望ましいです。
設計図書は理解するだけでなく、現場で正しく活用することが非常に重要です。
紙やPDFでの管理だと「最新版はどれか分からない」「図面の確認に時間がかかる」といった課題が発生しがちです。
そこで、建設業向け業務管理システムAnyONEのような施工管理ツールを使えば、設計図書の情報を効率よく管理・共有できます。
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・スマホやPCからいつでも必要な書類を確認可能
・差し替えや更新履歴を自動で管理し、手戻りや施工ミスを防止
・現場とオフィス間での情報共有がスムーズになり、施工効率が向上
このように、デジタルでの設計図書管理を取り入れることで、建設プロジェクトの品質や効率を大きく改善することができます。
他にも下記のような機能を使用することができます。

この記事では、建設プロジェクトの基盤となる設計図書について、その定義から構成する書類の種類、関連用語との違い、法的な保管期間までを解説しました。
設計図書は、単なる図面の集まりではなく、発注者の想いを形にし、多くの工事関係者が同じ目標に向かって進むための共通言語です。
その内容を正しく理解し、適切に取り扱うことが、建設プロジェクトを成功に導くための重要な鍵となります。
また、現場でその情報を正しく共有できる環境を整えることも同じくらい重要です。
近年では、設計図書をデジタルで管理し、変更履歴や共有状況を一元化する企業が増えています。
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