「一人親方制度が廃止されるらしい」という話を聞き、不安に感じていませんか。
結論から言うと、一人親方という働き方そのものが法律で禁止され、制度が完全になくなるわけではありません。
しかし、インボイス制度の開始や国の政策により、これまでと同じ働き方を続けるのが難しくなっているのは事実です。
この記事では、なぜ制度廃止の噂が広まったのか、その背景と今後の動向、そして一人親方として働き続けるために必要な対策を分かりやすく解説します。
INDEX
近年、建設業界を中心に「一人親方制度が廃止される」という情報が広まっていますが、これは正確な情報ではありません。
制度自体がなくなるわけではありませんが、働き方や取引条件に大きな変化が求められているのが現状です。
現時点(2025年)で、一人親方制度そのものを法律で禁止するという動きはありません。
一人親方は、高い技術力を持つ個人事業主として、建設業界に欠かせない存在です。そのため、国がこの働き方を完全に無くすことは考えにくいでしょう。
しかし、後述するインボイス制度や社会保険の問題に対応できない一人親方は、事実上、仕事を受注しにくくなる可能性があり、これが「廃止」という言葉で表現されていると考えられます。
では、なぜ「廃止」という強い言葉が使われるようになったのでしょうか。
その背景には、一人親方を取り巻く環境の大きな変化があります。
特に、インボイス制度の導入、社会保険加入の促進、そして「偽装一人親方」問題という3つの要因が複雑に絡み合っています。
これらの変化が、一人親方としての働き方を根本から見直す必要性を生み出しており、その厳しさから「制度が廃止される」という噂につながったのです。
一人親方制度が廃止されるという噂は、単なるデマではありません。その背景には、建設業界の構造的な課題と、それに対応するための国の政策があります。
ここでは、噂の根源となった3つの大きな要因について解説します。
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、一人親方の働き方に最も大きな影響を与えた要因の一つです。
この制度により、元請け企業は、インボイス(適格請求書)を受け取れないと、消費税の仕入税額控除が受けられなくなりました。
多くの免税事業者であった一人親方がインボイス発行事業者になるためには、課税事業者になる必要があり、これが収入の減少に直結します。
元請け企業から取引条件としてインボイスの発行を求められるケースが増え、対応できない一人親方が仕事を失うリスクが生じています。
国土交通省は、建設業界全体の処遇改善と若手入職者の確保を目指し、社会保険への加入を強力に推進しています。
企業に雇用されている労働者であれば、健康保険や厚生年金への加入は義務ですが、個人事業主である一人親方は対象外でした。
しかし、国は偽装一人親方問題を背景に、実質的に雇用関係と変わらない一人親方に対しても、適切な保険加入を元請け企業に指導する方針を強めています。
これにより、社会保険に未加入の一人親方は、現場に入れないケースが増加しています。
| 保険の種類 | 加入の状況 | 今後の動向 |
| 健康保険 | 国民健康保険に加入 | 適切な社会保険加入が現場入場の条件とされる |
| 年金保険 | 国民年金に加入 | 厚生年金は加入対象外(個人事業主のため) |
| 労災保険 | 特別加入が可能 | 加入は推奨される流れ。未加入では現場に入れないケースがある |
| 雇用保険 | 対象外 | 対象外(個人事業主のため) |
偽装一人親方とは、実態は企業の従業員と変わらない働き方をしているにもかかわらず、形式上は個人事業主として契約されている人のことを指します。
企業側が社会保険料の負担を逃れるために、このような契約形態を悪用するケースが問題視されています。
国土交通省は、この偽装一人親方問題を解決するため、元請け企業に対する監督を強化しています。例えば、特定の企業の仕事しか請け負っていなかったり、仕事の裁量権がなかったりする場合は、偽装一人親方と見なされ、元請け企業が指導を受ける可能性があります。
この流れが、「一人親方という働き方自体が厳しくなる」という認識につながっています。
インボイス制度や国の政策強化により、一人親方を取り巻く環境は確実に変化しています。これまで通りのやり方では、事業の継続が困難になる可能性があります。具体的にどのような変化が起きるのかを解説します。
今後、一人親方として仕事を続けていくためには、インボイス制度への対応が重要な検討事項となります。
取引先が課税事業者の場合、「適格請求書発行事業者」への登録が仕事の継続に有利となる可能性がありますが、2029年9月まで経過措置(80%→50%の控除)があるため、必ずしも絶対的に必須ではありません。
元請け企業の多くは、税負担を避けるためにインボイスを発行できる事業者との取引を優先します。
そのため、インボイスに登録していないと、今後新規の受注が困難になったり、既存の契約を見直されたりする可能性が非常に高くなります。
国土交通省は「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を改訂し、社会保険未加入の作業員がいる場合、元請け企業が指導を行うよう求めています。
これには一人親方も含まれており、労災保険への特別加入はもちろんのこと、健康保険や年金についても、適切な保険に加入していることが現場入場の条件となるケースが増えていきます。
これにより、社会保険への加入が実質的な義務となりつつあります。
偽装一人親方問題への対策として、元請け企業は一人親方との契約内容をより厳しくチェックするようになります。
契約書の内容はもちろん、実際の働き方が労働者に近くないか、裁量権や独立性が保たれているかなどが問われます。例えば、時間的な拘束が厳しかったり、使用する道具を会社が支給していたりすると、偽装一人親方と判断されるリスクが高まります。
元請け企業は自社を守るため、一人親方に対してより厳しい管理を行うようになるでしょう。
厳しい環境変化の中、一人親方として事業を継続していくためには、積極的な対応が不可欠です。
ここでは、具体的な対策を3つのポイントに分けてご紹介します。これらの対策を早めに進めることが、将来の安定につながります。
まだ適格請求書発行事業者になっていない場合は、速やかに登録手続きを進めるべきです。登録には時間がかかる場合もあるため、早めに行動しましょう。登録後は、請求書のフォーマットをインボイスの要件に合わせて変更し、消費税の計算や申告・納税の準備も必要になります。税理士などの専門家に相談し、経理処理の方法を確認しておくことをお勧めします。
| 対策項目 | 具体的なアクション |
| 事業者登録 | 納税地を管轄するインボイス登録センターに、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する |
| 請求書様式の変更 | 登録番号、適用税率、消費税額等を記載した様式に変更する |
| 経理処理の準備 | 消費税の納税額を計算し、納税資金を確保しておく |
| 取引先への通知 | 登録が完了したら、元請けなどの取引先に登録番号を通知する |
国民健康保険や国民年金への加入は法令により義務付けられています。建設国保は国民健康保険の選択肢の一つであり、労災保険への特別加入は任意ですが、現場入場や元請け企業からの信頼を得るために重要と考えましょう。
まだ未加入の場合は、すぐに関係団体に問い合わせて手続きを進めてください。
社会保険に加入することは、自身の生活を守るだけでなく、元請け企業からの信頼を得るためにも重要です。
今後の事業展開や年齢によっては、法人化(マイクロ法人を含む)や、企業に正社員として雇用されることも有効な選択肢です。法人化すれば、社会保険に加入でき、信用力も高まります。
一方、正社員になれば、安定した収入や福利厚生が得られ、保険や税金に関する手続きの負担もなくなります。
自身のキャリアプランやライフプランと照らし合わせ、多様な働き方を検討してみましょう。
一人親方をとりまく環境の変化は、発注者である元請け企業にも大きな影響を及ぼします。知らないうちに法令違反をしていた、ということにならないよう、注意点をしっかり確認しておく必要があります。
最も注意すべきは、偽装一人親方との契約です。
実態が労働者であるにもかかわらず、業務委託契約を結んでいると判断された場合、元請け企業は労働基準法違反や社会保険料の遡及納付義務といったペナルティを受けるリスクがあります。
国土交通省が示すチェックリストなどを活用し、契約している一人親方の働き方が適切かどうかを定期的に確認することが重要です。
国土交通省は「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を随時改訂しており、元請け企業には下請け企業(一人親方を含む)への指導責任があることを明記しています。社会保険未加入の作業員を現場に入場させないといった厳しい措置も求められています。
最新のガイドラインの内容を正確に把握し、自社の安全管理体制や契約内容が法令に準拠しているかを見直すことが不可欠です。
一人親方として、インボイス対応や社会保険加入といった変化に対応する際、業務効率や情報管理を助けるツールの導入も有効です。
建設業界に特化した業務効率化システムAnyONEを活用すれば、以下のようなメリットがあります。
こうしたツールを取り入れることで、働き方の変化に柔軟に対応しつつ、事業を安定して継続することができます。
一人親方制度がすぐに廃止されることはありませんが、インボイス制度や社会保険加入の促進により、その働き方は大きな転換期を迎えています。
これらの変化に対応し、適格請求書発行事業者への登録や社会保険への加入を進めること、そして AnyONE などのツールを活用することが、今後も事業を継続する鍵となります。
最新の情報を常に収集し、ご自身の働き方を見直す良い機会としてください。
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