工事請負契約書の記入例!明記するべきことと作成時の注意点も解説

工事請負契約書の記入例!明記するべきことと作成時の注意点も解説

工事請負契約書は、建設やリフォーム工事を依頼・請負う際に欠かせない重要な書類です。適切に作成された契約書は、双方の認識を明確にし、トラブルの発生を未然に防ぐ効果があります。

本記事では、工事請負契約書が必要な理由、具体的な書き方や記入例、必須項目、そして注意すべき点について詳しく解説します。

工事請負契約書とは?

工事請負契約書とは、建設工事やリフォーム工事を依頼する際に、発注者(依頼する側)と施工者の間で交わす契約書です。この書類には、工事の内容、費用、期間、支払い方法などが具体的に記載され、工事に関わる重要な情報が網羅されています。

書面上での記載によって、双方の合意内容が明確になり、後から「言った」「言わない」といったトラブルを防ぐ役割を果たします。建設業法では、工事請負契約書の作成が義務づけられており、工事が始まる前に締結しなければなりません。

この契約書を交わさないと、トラブルが発生した場合に話し合いが進みにくくなるだけでなく、法律違反となる可能性があります。

工事請負契約書が必要な理由

工事請負契約書が必要な理由

工事請負契約書がなぜ必要なのか、その理由を具体的に解説します。

 不利な契約を結ばないため

建設工事では発注者による設計変更や追加工事によって、工程や金額が変更になるなどの事態が起こり得ます。

そのため、発注者側と施工者側で不平等な条件で契約が締結されるリスクが生じます。

例えば「代金の支払い時期が明記されておらず、支払いが遅れる」や「一方的な変更による損害賠償の責任を押し付けられる」といった不公平な事態が起こりかねません。

工事請負契約書に、代金の支払い時期や変更が発生した場合のルールが明記されていれば、双方が公平な条件で契約を結びやすくなります。

 相互の認識をすり合わせるため

建設工事では、工事の範囲や仕様が曖昧だと、作業の途中で「こんなはずではなかった」というトラブルが発生しやすくなります。

リフォーム工事を依頼した場合、壁紙の色や使用する素材の種類が具体的に決められていなければ、完成後に依頼主が不満を感じるかもしれません。

工事請負契約書を作成する際には、図面の添付や使用する材料リストなど工事内容を詳細に記載し、発注者と施工者の間での認識の一致が必要です。

契約書の記載によって、双方が「この工事はこう進む」という具体的なイメージを共有できます。

 トラブルや紛争を防ぐため

建設工事は、天候や予期せぬ問題などトラブルが多い業務です。

工事現場では以下のようなトラブル、紛争が起きる可能性があります。

●発注者都合での仕様変更や設計変更により追加工事が発生した際の費用負担をどちらがするかで揉める

●地中から障害物が発見され、除外する際にどちらが費用を負担するかトラブルになる

●施工業者に契約違反がないにも関わらず、発注者都合で一方的に契約を解除されて紛争になる

工期の遅延や追加工事が必要になった場合、契約書がないと「責任はどちらにあるのか」「誰が費用を負担するのか」といった点で揉める可能性があります。

契約書に天災などによる工期変更の取り扱いや、追加工事が発生した場合の費用負担について記載しておけば、トラブルが起きてもスムーズに解決しやすくなります。

こうした点からも、契約書締結は信頼関係を構築するうえで欠かせないステップといえるでしょう。

工事請負契約書作成のポイント!明記するべき6つの項目

工事請負契約書作成のポイント!明記するべき6つの項目
工事請負契約書に特に明記しておくべき6つの項目を解説します。

 工事内容・日数の内訳

工事内容や日数の内訳は、契約双方が共通の認識を持つために非常に重要です。

例として、建物の解体工事であれば「解体範囲」「処理方法」「廃棄物処理の詳細」などを具体的に記載します。

【記入例】

Ÿ  工事内容:〇〇ビル解体工事

Ÿ  工期:2024年1月10日~2024年3月20日

Ÿ  解体範囲:地上3階建て、地下1階の建物全体(延床面積〇〇㎡)

Ÿ  処理方法:建築資材のリサイクル可能部分(コンクリート、鉄骨材)は分別し、適正な処理施設へ運搬

 工事遅延の違約金

工事が予定通り進まなかった場合の違約金についても、事前の取り決めによって、工期遅延に対する抑止力が働きます。

【記入例】

Ÿ  違約金:工期が1日遅延するごとに、請負代金の1%(最大20万円/日)を違約金として請求する。

 工期延長の条件

不可抗力や設計変更など、正当な理由で工期を延長する場合の条件も契約書に明記しておく必要があります。

【記入例】

工期延長の条件:地震、台風などの自然災害により工事が進行不可能な場合、発注者の承認を得たうえで、工期を延長する。

 追加工事代金

追加工事が発生した場合の代金計算方法や支払い時期の事前の取り決めによって、後の交渉を円滑に進められます。

【記入例】

Ÿ  追加工事代金:追加工事が発生した場合、1㎡あたりの単価〇〇円を基準に算定し、追加分の請求書を発注者に提出する。

 近隣のクレーム対応

工事中は近隣住民からの騒音や振動に関するクレームが発生する可能性が高いため、その対応を事前に定めておく必要があります。

【記入例】

Ÿ  クレーム対応:騒音や振動に関する苦情が発生した場合、現場代理人が速やかに発注者に報告し、適切な対応を行う。

 想定外の費用においての対応

工事中には、地中障害物や埋蔵文化財の発見、土壌汚染など予期せぬ費用が発生する場合があります。

想定外の費用の対応については、契約書上で事前の取り決めによって、不測の事態にも柔軟に対応でき、工事の遅れを最小限に抑えられます。

【記入例】

Ÿ  想定外の費用対応:工事中に中障害物や埋蔵文化財、又は土壌汚染が発見された場合、発注者の承認を得たうえで、追加費用を別途請求する。

工事請負契約書の書き方・記入例

工事請負契約書_01

工事請負契約書_02

工事請負契約書_03

工事請負契約書_04

工事請負契約書に記載するべき16項目は、建設業法第19条に基づき定められています。

上記のサンプルは、契約書は一般的な工事、約款はリフォーム工事の参考例です。

新築工事と原則記載内容は同一ではありますが、実際の契約時には施主の要望も考慮し、自社の実務に最適化した契約書作成をおすすめします。

実際の契約書は、工事の種類や規模、依頼者と請負業者の状況に応じて内容を調整する必要があります。

特に、新築工事においては、工事範囲や使用する資材、スケジュール、追加工事の条件など、各工事に特有の要素を反映させることが重要です。

 必須の16項目

工事請負契約書に記載するべき必須の16項目について、それぞれのポイントを解説します

  ①工事内容

工事内容は契約の根幹となるため、具体的な記載が不可欠です。施工する範囲や作業の詳細、仕様、使用する材料などの明確な記載によって、双方の認識を統一します。

  ②請負代金の額

請負代金の金額は契約時点で明確にし、変更が生じる場合の条件も盛り込みます。また、代金の内訳の明示によって、透明性を高め、後のトラブルを防ぎます。

  ③工事着手の時期及び工事完成の時

工事開始と終了の時期を記載し、関連する作業の進捗や期限についてのルールを決めておく必要があります。スケジュールの具体化によって、双方が工期を守りやすくなります。

  ④工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

施工しない日や時間帯の明確化によって、近隣住民や法的な制約に配慮した工事計画が立てられます。

  ⑤請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

前金払いや進捗に応じた支払い時期と方法の取り決めによって、双方が資金面で安心して工事を進められます。

  ⑥当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

設計変更や延期、中止が発生した場合の対応についての記載により、予期しない事態への迅速な対応が可能となります。

  ⑦天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

地震や台風などの不可抗力による工期の遅延や損害についても、あらかじめ取り決めをしておきます。

  ⑧価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

資材価格の変動が発生した場合の請負代金や工事内容の変更に対応できるよう、調整方法や基準を記載しておくと安心です。

  ⑨工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

工事が第三者に損害を与えた場合の賠償責任についての明確化によって、発生した問題を速やかに解決できる体制を整えられます。

  ⑩注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

資材や機械を提供する場合、その内容や管理方法の取り決めによって、適切な使用や管理が可能となります。

  ⑪注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

工事完成後の検査や引渡しのタイミングの記載によって、発注者の承認を得やすくなり、引渡し後の問題も減らせます。

  ⑫工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

完成後の請負代金支払について、時期や方法の明確な設定によって、支払いに関する不安や遅延を防げます。

  ⑬工事の目的物が契約内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任及びその措置に関する定め

品質や種類の不適合が生じた場合の保証や保険についての記載によって、完成後のトラブルに備えられます。

  ⑭各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

履行の遅延や債務不履行が発生した場合における対応について定め、損害の補償や責任の所在を明確にできます。

  ⑮契約に関する紛争の解決方法

紛争解決の方法の記載によって、トラブルが発生した際に適切な対応が可能となります。仲裁や裁判所の指定などが考えられます。

  ⑯その他国土交通省令で定める事項

法令で定められているその他の事項の記載によって、契約が法的に適切な内容であることを保証できます。

工事請負契約書作成時の注意点

工事請負契約書作成時の注意点

工事請負契約書を作成する際に、特に注意すべき点を解説します。

 現場代理人をおく場合は注文者への通知が必要

工事現場では、発注者と直接やり取りを行う現場代理人を立てるケースが一般的ですが、現場代理人をおく場合には、事前に発注者への通知が必要です。

契約書には「現場代理人を置く場合、氏名と役職を発注者へ事前に通知する」といった文言の明記をおすすめします。

また、代理人の変更があった際にも速やかに連絡する旨を記載しておくと、スムーズなコミュニケーションが期待できます。

 一括下請負には注文者の承諾が必要

建設業法では、一括下請負が原則として禁止されています。

一括下請負とは、元請業者が受けた工事全体を下請業者にそのまま丸投げする場合を指し、工事の品質や安全管理に悪影響を与える可能性があるためです。

ただし、特別な理由がある場合には、発注者の事前承諾を得れば一括下請負が認められるケースもあります。

その際、契約書には「一括下請負を行う場合は発注者の書面による承諾を得ること」と明記します。

 印紙には消印が必要

工事請負契約書は課税文書に該当するため、一定の金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

しかし、収入印紙を貼るだけでは税金を納付したことにはならず、必ず消印を行わなければなりません。

消印は、印紙の再利用を防ぐために必要ですが、適切に消印を行わなければ未納扱いとなり、後から追加で過怠税が発生する可能性があります。

そのため、契約時に担当者により消印の押し忘れがないか確認しましょう。

まとめ

工事請負契約書は、工事の成功とトラブル防止のために非常に重要な役割を果たします。

適切な作成によって、双方が納得できる契約を結び、円滑な進行が可能です。

しかし、手作業や紙ベースでの作成には時間がかかり、ミスが発生するリスクもあります。そこでおすすめなのが、AnyONEの電子契約機能です。

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記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。


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