工事監理と施工管理の違いとは?立場や仕事・必要な資格

工事監理と施工管理の違いとは?立場や仕事・必要な資格

建設現場で混同されやすい用語に、工事監理と監理技術者、施工管理と工事管理などがあります。

工事監理は、発注者の代理人として工事を監理しますが、監理技術者は工事の元請会社が配置し下請会社を指導、監督する役割です。施工管理と工事管理は、ほぼ同じ意味の用語ですが、実際の施工現場では施工管理がよく使われています。

この記事では、工事監理と施工管理の違いについて、立場や仕事と必要な資格、工事監理ガイドラインを活用する重要性を解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、工事監理と施工管理の仕事への理解にお役立てください。

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工事監理と施工管理とは

国土交通省が2005年(平成21年)に制定した「工事監理ガイドライン」によると、工事監理の業務とは、「工事と設計図書との照合及び確認」だとしています。また、その業務内容を示す時は、「確認対象工事に応じた合理的方法」でなければならないとされています。

一方で施工管理は、建設現場が安全かつ効率的に工事を進められるように工事全体の管理をする業務です。管理の柱とするのは、品質、工程、安全、原価、環境の5つの管理です。

以上のことからわかるように、工事監理は建築主の立場で現場を確認し、施工管理は工事内容が設計図書と違いがないかチェックを受ける側ということになります。

工事監理と施工管理(工事管理)の仕事の違い

工事監理と施工管理(工事管理)の仕事の違いを、それぞれ2つのポイントで解説します。

 工事監理の仕事

工事監理の主な仕事は、設計と施工の適合性の確認と発注者と施工現場の仲介の2つです。

  ①設計と施工の適合性の確認

建築基準法において、「建築主は建築士である工事監理者を定めなければならい」と規定しています。工事が設計図書通りに施工されているかを確認して建築主に報告するには、建築にかかわる相当の実績や学識が求められるからです。

建築士資格の種別に応じた工事監理可能な建築物については、建築士法で定めています。工事と設計図書との照合は、確認対象工事に応じた合理的な方法によるものとされ、立会確認もしくは書類管理、またはその併用によって実施します。

  ②発注者と施工現場の仲介

工事監理は、建築主の代理人という位置づけであり、施工現場の状況を建築主と共有する必要があります。質疑書や施工図、工事材料や設備機器の検討および報告などです。工事と設計図書との照合と確認の結果、工事が設計図書の通りに施工されていないと認められた場合は、直ちに工事施工者に対して当該工事を設計図書通りに施工することを求めなければなりません。

工事施工者がこれに従わない時は、工事施工者が設計書通りに施工しない理由について建築主に書面で報告し、そのあと建築主および工事施工者と対応を協議します。

 施工管理(工事管理)の仕事

施工管理の仕事の主なものは、5大管理で施工現場を管理しながら、現場を計画通りに動かすための調整を行うことです。

  ①5大管理で施工現場を管理

施工管理にとって5大管理は施工管理の重要な柱です。5大管理とは、「Quality」品質、「Cost」コスト・原価、「Delivery」工程・工期、「Safety」安全、「Environment」環境の5つのことで、頭文字を連ねて「QCDSE」と称されることも多いです。

この「QCDSE」を管理の柱として、精度の高い施工管理を行うことで業務の効率化と生産性の向上の実現を目指します。最近では、ICT施工や働き方改革などの影響があり、「QCDSE」の見直しが注目されています。

  ②現場を動かすための調整

施工管理は、建設現場を指導・監督するという業務をこなしながら、現場を動かすための調整で中心的な役割を果たしていかなければなりません。そのため施工管理には、現場を管理するマネジメント力やコミュニケーション能力、不測の事態における対応力は必須のスキルといえます。

施工計画、工程表、実行予算書を作成して計画通りに実行していくスケジュール管理能力、工事書類を作成するためのエクセルやワード、CADなどの基本的な操作も必要です。

工事監理と施工管理の立場の違い

建設工事には公共性があり施工に高い精度が求められるため、工事監理も施工管理も重要な立場に変わりはありません。しかし、双方の仕事には大きな違いがあります。ここからは、工事監理と施工管理の立場の違いについて解説します。

 工事監理の立場

工事監理は、建築士法第27条第7項で定義されている通り、建築士の独占業務です。設計事務所の設計担当者が職務を担うことが多く、建築主の代理人の立場で監理を行います。
建築主は専門的な建築の知識があるとは限りません。そこで工事監理が代理という立場で施工現場に赴き、施工現場の工事内容を設計図書との照合や確認を実施します。

また、立会確認や書類管理の過程で、現場の施工管理に対し、施工図の内容や施工方法についての指示を出すこともあります。

 施工管理の立場

施工管理は、工事の請負会社の代表という立場で施工現場全体のマネジメントを行います。
現場や会社の代表として、さまざまな場面で、建築主や工事監理、協力会社の作業者、近隣住民などとの調整に臨まなければなりません。

施工管理は、会社から現場を任されているという立場でもあります。施工計画書をベースに5大管理を行い、工事の予算と実績について経営サイドや管理部門と打合せすることも重要な業務の一つです。

工事監理と施工管理の役割の違い

工事監理と施工管理は、どちらも建設工事おいて重要な役割を果たしますが明確な違いがあります。工事監理と施工管理の役割の違いについて解説します。

 工事監理の役割

建築主は、工事を発注する時、建築に関わる高度な知識と実績のある設計者と工事監理を選定しなければなりません。
設計者は、建築工事に必要な情報を網羅した設計図書を作成する役割を担います。工事監理は、建築主の代理人として、設計図書通りの施工が行われているかを確認します。

一定の建築物の設計は建築士の独占業務ですが、工事監理についても建築士の独占業務です。これは建築士が、資格者としての重責を負っているということでもあります。

 施工管理の役割

施工管理は、工事請負会社の代表として契約書に定められた工期と金額で、設計図書通りの建築物の工事を施工する役割を担っています。
現場と書類の管理を日常的に行い、適切な成果品としての竣工書類の作成も必要です。同時に、工事予算書に基づき予算と実績の差異を確認しながら、適正な利益も追求しなければなりません。

設計図書通りの施工品質と適正な利益の確保の両立が施工管理の役割といえるでしょう。

工事監理と施工管理の資格における違い

ここでは、工事監理と施工管理の資格における違いについて説明します。

 工事監理に必要な資格

工事監理に必要な資格は、基本的に、建築士の1級か2級です。建築士法では、建築士の資格種別に応じた工事監理可能な建築物について定めています。
一部の建築物では、高さや延べ面積、構造などで建築士でなくても工事監理できるものもあります。

建築士に似た資格に建築施工管理技士がありますが、これは工事現場で施工管理を行うための資格です。

【参考】国土交通省|工事監理について

 施工管理に必要な資格

施工管理に必要な資格の代表的なものは、施工管理技士です。施工管理技士は国家資格であり、建築施工管理技士を含め7種類あります。受験には、年齢や学歴に応じた実務経験などの受験資格が必要です。

似た資格に技術士がありますが、技術士は各専門分野における技術上の問題を解決できる専門的応用力についての資格であり、施工現場の管理とは一線を画す資格です。

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まとめ

ここまで、工事監理と施工管理の違いについて、以下の内容で解説してきました。

● 工事監理と施工管理の概要
● 工事監理と施工管理の仕事の違い
●工事監理と施工管理の立場の違い
●工事監理と施工管理の役割上の違い
●工事監理と施工管理の資格における違い

建設会社として工事監理にしっかり対応して、施工管理の精度の向上を実現するためには、業務効率化ツールの活用が有効です。

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記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。


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