ネットワーク工程表の作り方｜知っておきたいメリット・用語もわかりやすく解説

工事における各作業の所用日数や作業間の依存関係が分かりやすいため、建設工事全般で広く採用されているネットワーク工程表。
ただ、ネットワーク工程表の作成方法は複雑で手間がかかり、いくつかの専門用語や表記ルールを把握する必要もあります。

本記事では、ネットワーク工程表の特長やメリット、作成のポイント、実際の作成方法を解説します。
複数の工種がある現場で、ネットワーク工程表の活用を考えている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

 

ネットワーク工程表とは？

ネットワーク工程表とは、工事やプロジェクトにおける作業の順序や依存関係を、図式化して管理する工程表の一種です。作業を「アクティビティ」と呼ばれる矢印で表し、イベント番号を結ぶ形で進行を示します。
これにより、全体の作業の流れや重要なクリティカルパス（最短工期を決める作業経路）が明確になり、遅延リスクの把握や工期短縮の検討に役立ちます。複雑な工事でも効率的に工程管理できるのが特徴です。

ネットワーク工程表の作成に必要な用語

ネットワーク工程表の作成では、作成に必要な用語と作成に必要な表記ルールを、しっかり把握することがポイントです。
施工管理者の方向けに、ネットワーク工程表の作成に必要な用語と意味を表にまとめました。

用語	説明
イベント	数字の書かれた〇のことで、プロジェクト内の各作業の結合点を意味します。 プロジェクトの進行において、作業と作業をつなぐ重要な接続点であり、 左から右に向かって数字が大きくなるように配置されます。
アクティビティー	イベントとイベントをつなぐ矢印のことで、通常「→」で表現されます。 この矢印の上には作業番号を、下には作業に必要な日数を記載します。 プロジェクトの流れと各作業の関係性を視覚的に示す重要な要素です。
ダミー	「・＞」で表され、作業の順序を規制するために用いられる特別な記号です。 プロジェクト管理において、作業の論理的な依存関係や制約を明確にするために使用されます。
最早開始時刻	数字の書かれた口で表現され、特定の作業に最も早く着手できる時刻を示します。 複数の先行作業がある場合は、最も日数がかかる作業を優先的に考慮します。 これにより、プロジェクトの効率的な進行を計画します。
最遅終了時刻	作業を遅くともこの時点までに完了させなければならない期限を意味します。 結合点に複数の作業がある場合は、所要日数の最も短い作業を基準とします。 プロジェクトの遅延を防ぐための重要な管理指標となります。
トータルフロート	作業が遅れても、プロジェクト全体の工期に影響が出ない日数を意味します。 プロジェクト管理において、柔軟性を示す指標であり、スケジュール調整の余裕を表現します。
フリーフロート	作業が遅れても次の作業に影響しない日数を意味します。 常にトータルフロートの数値以下となり、より細かいスケジュール管理を可能にする指標です。 プロジェクトの詳細な進行管理に役立ちます。
クリティカルパス	プロジェクトの開始点から最終結合点までで、最も日数がかかるルートを指します。 プロジェクト全体の進行において最重要な管理ルートであり、慎重な監視と管理が必要です。 必ずしも一つのルートだけではなく、複数存在する可能性があります。 プロジェクト成功の鍵となる重要な概念です。

ネットワーク工程表には以上のような専門用語があります。
ネットワーク工程表は作成が複雑でわかりにくいといわれますが、専門用語とルールを把握すればスムーズに工程表作成が可能です。
上記でまとめた表を参考にして、わかりやすいネットワーク工程表を作るよう心がけましょう。

ネットワーク工程表とバーチャート・ガントチャートの違い

項目	ネットワーク工程表	バーチャート/ガントチャート
可視化するもの	作業順序と依存関係	タスクと期間
強み	クリティカルパスが一目で分かる	直感的・誰でも読める
弱み	習得難度が高い	依存関係を表しにくい
主な用途	大規模工事・複合プロジェクト	小〜中規模現場の進捗共有

新築やリフォームをメインに扱う中小規模の工務店では、シンプルで視覚的に理解しやすいバーチャート、ガントチャート工程表をベースに工程表を運用することが多いです。協力会社や施主との共有を考えても、棒グラフで進捗が把握できるガントチャートの方が馴染みやすく、現場での意思疎通にも向いています。

一方で、複数の業者や工種が複雑に絡み合う大規模工事では、依存関係を正確に把握できるネットワーク工程表が有効です。特に、工期全体を左右する「クリティカルパス」を可視化できる点は大きなメリットといえるでしょう。
つまり、工務店の日常業務ではガントチャートを効率的に運用するのが現実的ですが、より高度な計画段階や大規模案件ではネットワーク工程表の知識が役立ちます。

ネットワーク工程表の実際の活用事例

【引用】：【1級建築施工 第一次検定】ネットワーク工程の用語・解説・解き方

上図（イベント番号 ①〜⑩）のネットワーク工程表を、実際の工種に当てはめて解説します。

例として、中規模倉庫の新築工事を想定した解説します。

イベント	実際の作業内容	所要日数
①	設計・確認申請完了	―
②	基礎コンクリート打設完了	6 日
③	アンカーボルト検査／墨出し	4 日
④	鉄骨製作完了（工場）	6 日
⑤	土間下配管・埋め戻し	3 日
⑥	鉄骨建方	8 日
⑦	屋根デッキ＆防水	4 日
⑧	外壁 ALC 取付	3 日
⑨	内装・設備一次固定	4 日
⑩	竣工・引き渡し	7 日

ネットワーク図をたどると、次の 2 ルートがどちらも32日で並び、両方がクリティカルパスになることがわかります。

• ルート A：基礎完了後に鉄骨を工場で製作（④）し、それを現場に搬入して屋根・外壁・内装へと進む流れ
• ルート B：基礎上でアンカー検査を済ませたのち即座に鉄骨建方（⑥）へ入り、同様に屋根・外壁・内装へ進む流れ

両ルートとも 32 日で並行しているため、どの工程が1日でも遅れれば、竣工もその分だけ後ろへずれることがわかります。

特に下記 2 点は常に注意が必要です。

■鉄骨製作（④）と鉄骨建方（⑥）の両方がクリティカル 工場側の遅れも現場側の遅れも同じ重みで工期に響く。■屋根（⑦）・外壁（⑧）・内装一次固定（⑨）は両ルートの合流点 ここでトラブルが起きると、すべての作業が同時にストップしやすい。

今回のネットワーク工程表では、土間下配管・埋め戻し（⑤） に約1日の余裕時間（トータルフロート）が含まれています。たとえば悪天候によって 鉄骨建方（⑥）が1日遅れたとしても、⑤を夜間作業へ切り替えればその遅延を吸収できる計算です。

こうした小さな余裕を工程の随所に分散して確保しておくことで、突発的なトラブルが２～３日続いた場合でも、全体スケジュールをずらさずに対応できます。

以上のように、ネットワーク工程表を実際の工種に置き換えると、どの作業を最優先で守るべきかを一目で把握できます。

ネットワーク工程表による工程管理のメリット

建設プロジェクトの複雑性が増す中、ネットワーク工程表は非常に有用な管理ツールとして活用されています。ここからは、ネットワーク工程表の主要な6つのメリットについて解説します。

作業の順序と関連性の明確化

ネットワーク工程表は、各作業の順序と相互依存関係を視覚的に理解できる点で優れています。特に大規模で複雑な建設プロジェクトにおいて、並行して進行する多数の作業タスクを一目で理解できるため、プロジェクト全体の構造を正確に把握することが可能です。

作業所要日数の正確な把握

各作業に必要な日数を詳細に可視化することで、プロジェクト全体の工期を正確に予測し、管理することができます。異なる作業ルートの所要日数を比較検討し、最適な工程計画を立案することが可能です。

柔軟な工程管理と調整

予期せぬ事態（事故、悪天候、資材の遅延など）が発生した場合でも、ネットワーク工程表があれば迅速に作業の見直しや再調整を行うことができます。車両・重機のレンタル期間の最適化や、無駄な待機時間の削減など、具体的な工期短縮戦略を立案できるため、柔軟に工期を変更して最終納期に間に合うように対応できるでしょう。

リスク管理の強化

クリティカルパスを明確に特定することで、プロジェクトの潜在的なボトルネックや遅延リスクを事前に把握できます。各作業の重要度と余裕時間を理解することで、資材の遅れが生じやすい前後では余裕を持たせるようにするなどの調整が可能です。

コミュニケーションと透明性の向上

ネットワーク工程表を用いれば、工事全体のスケジュールが可視化され、伝わりやすくなります。ただし、ガントチャートやバーチャートのように単純な表ではないため、読み解けるように読み方の指導は必要です。

しっかり対策をしておけば作業員が工程や作業同士のつながりを理解したうえで作業できるため、納期への意識を持って作業にあたれるようになるでしょう。

リソース最適化と原価管理

各作業の詳細な工程と所要時間を把握することで、人員、機材、資材などのリソースを効率的に配分できます。これにより、不必要な待機時間や重複作業を削減し、工事全体の原価管理を改善することができます。

ネットワーク工程表を作る際の注意点とリスク

ネットワーク工程表は建設プロジェクトの管理において強力なツールですが、その複雑性ゆえに慎重な取り扱いが求められます。以下に、効果的な活用のために認識しておくべき重要な注意点とリスクも理解しておきましょう。

限定的な進捗管理機能

ネットワーク工程表は作業間の調整と全体的な工程管理には優れていますが、個別作業の詳細な進捗状況を把握するには限界があります。そのため単体での使用ではなく、ガントチャートやバーチャートなどの工程表との併用で、さらに分かりやすく工程を伝える工夫が必要です。

専門性と習得の難しさ

この工程表の作成には、独自の専門用語と複雑なルールの理解が不可欠です。他の工程表と比較して習得に時間と労力を要するため、作業員に共有するための準備や指導が求められます。

データ精度と準備の重要性

工程表の信頼性は、入力されるデータの正確性に直接影響します。作業工数や所要日数の不正確な設定は、全体の工程表の精度を著しく低下させるリスクがあります。また、信頼性の高い工程表作成には、事前の綿密なデータ収集と分析が必須です。

工程表を作成する前にまずネットワーク工程表の作り方をしっかり学び、そのうえで過去のデータなども用いて正確な算出による工程表作成をしましょう。

コミュニケーションと理解の徹底

工程表の真の価値は、プロジェクトに関わるすべての関係者が内容を正確に理解できることにあります。作成者個人だけでなく、チーム全体で工程表のルールと解釈方法を共有し、共通の理解を得られるでしょう。

柔軟性の確保

厳密な工程表は、予期せぬ変更や突発的な状況に対応しにくい場合があります。柔軟な修正と更新が可能な仕組みを事前に準備し、現実の現場の状況に適応できるようにしておきましょう。

リソース配分の慎重な検討

複雑な工程表の作成には、時間がかかったり、リソースを取られるリスクがあります。そのため、小規模なプロジェクトでは、この労力が必ずしも効率的とは限りません。

プロジェクトの規模と複雑性に応じた適切な工程管理手法を選択する必要があります。

ネットワーク工程表の作成方法

ネットワーク工程表の作成方法を、実際の手順の流れで解説します。

まず工事内容の確認と作業同士の関連性をピックアップしたあとに、各作業にかかる日数を書いていきます。その後、具体的に人員や機材の配置を整え、工事の進捗とともにフォローアップも必要です。

工事内容の確認

ネットワーク工程表の対象となる工事の内容を、設計図書や特記仕様書などで確認します。

1つの工種を構成する各作業のリストアップが必要です。歩掛なども参考に、細分化された作業ごとの所要日数を割り出すと工程表全体の精度は格段にアップします。

逆にリストアップに漏れがあったり確認ミスがあったりすると、工程表全体の精度が落ちてしまうため工事内容の確認は慎重に行ってください。

依存関係の確認

リストアップした各作業の依存関係を確認します。各作業の工事進捗上の関連性から依存関係を確認し、作業同士を「→（アクティビティ）」で結びます。

結合部にはイベント番号を記載する必要があり、その際イベント番号は、作業の進行とともに数字を大きくしてください。

イベント間のアクティビティーは1本しか存在できません。同時に並行して作業を進める場合、前後に依存関係があるイベント間は、点線矢印の「ダミー」で関連性を示します。

各工事の所要日数を記入

工程表上の各作業の関連性に配慮したうえで、工期範囲内で収まることを前提として各作業にかかる標準的な日数を計算しましょう。算出した日数は、アクティビティーの下に入れておき日数がわかるようにしておきます。

同時並行で進む複数の作業ルートで所要日数が異なる場合は、所要日数の大きいほうを記入します。もっとも時間がかかるルートを選べば、工事全体の総所要日数を割り出すことが可能です。

人員配置・機材配置を整える

工程管理で重要なポイントは、作業内容や作業にかかる日数、工事原価を考慮して、適切な人員と機材の配置です。

ネットワーク工程表を基に、アクティビティーごとの詳細な計画を立てます。計画のポイントは作業者の人数や機材・資材の平準化です。適切な調整で活用できる考え方として、以下の3つの考え方があります。

• 山積み
• 山崩し
• エキストラコスト

上記3つの考え方で適切な割り振りができれば、工程に必要な人員や機材、資材が均等に配分できます。
過不足なく平均的に配置できれば、原価管理はもちろん、品質・安全においても安定的な施工管理ができるため、施工管理として覚えておきましょう。

進捗によってフォローアップ

フォローアップとは、工事の遅れなどににおける対応作業のことです。たとえば、悪天候や事故などで工事が遅延した場合における対応です。

遅延した日数に応じて、アクティビティーの所要日数を見直したり入れ替えたりして、日数の短縮化を行います。

クリティカルパスとなる点を早期に発見することが大切です。もっとも慎重に管理すべき点を早めに見つけることが、人員配置を補充したり機材を工事に投入したりするなどの対策を取れ、工事の遅延を最小限に抑えることができます。

ネットワーク工程表の作成ルール

ネットワーク工程表は、工期の最短ルートや作業の依存関係を把握できる便利な管理手法ですが、正しく作成するためには一定のルールを守る必要があります。作業番号や日数の書き方、矢印の方向性、イベント番号の付け方などを誤ると、工程全体の整合性が崩れてしまいます。
ここでは、ネットワーク工程表を作成する際に必ず押さえておきたい基本的なルールを解説します。

作業番号

作業番号は、ネットワーク工程表で各タスクを識別するための重要な要素です。アルファベットや数字をアクティビティ（矢印）の上に記載し、どの作業を示しているのか一目でわかるようにします。
番号付けを誤ると、どの作業がどの工程に対応しているか不明確になり、スケジュール全体が混乱しかねません。
特に複数の作業が並行して進む場合は、作業番号で管理しておくことが後の調整や確認作業をスムーズにします。

作業日数

アクティビティの下に記入する「作業日数」は、ネットワーク工程表の精度を左右する情報です。3日、4日、7日といった具体的な日数を明示することで、全体の工期やクリティカルパスを正確に把握できます。
実務では、過去の施工実績や職人の作業効率を参考に設定することが多く、過少見積もりは遅延リスク、過大見積もりはコスト増に直結します。現場に即した現実的な日数設定が不可欠です。

アクティビティーの方向

アクティビティ（矢印）は作業の進行方向を示すため、必ず左から右や上から下へと一定の方向で描きます。逆流するように矢印を書いてしまうと、工程の前後関係が誤解され、計画全体に混乱が生じます。方向性を統一することで、関係者全員が一目で工程の流れを理解でき、確認作業も効率化されます。
特に大型工事では複数の担当者が図面を扱うため、表記の統一は必須です。

イベント番号

イベント番号は、各作業の開始点や完了点を示す数字で、作業が進むにつれて大きくなる「正の整数」で記入します。この番号付けによって作業の順序関係が明確化され、前工程と後工程を見誤るリスクを防げます。
例えば、イベント番号が「1→2→3」と連続していれば、作業の流れが直線的に進んでいることを示し、関係者全員が共通認識を持てます。

アクティビティの完了

ネットワーク工程表において、次の作業に進むためにはアクティビティーを完了させる必要があります。この仕組みにより、どの作業がボトルネックになり得るのかが可視化されます。
例えば、基礎工事が完了しないと躯体工事に移れないように、依存関係を正確に表すことが工程管理の肝となります。

イベント間のアクティビティは1つ

イベントとイベントの間には、アクティビティを1つだけ入れます。複数の作業をまとめて1本の矢印で表すと、工程の詳細が不明確になり、後から遅延や不具合の原因を特定できなくなるからです。
作業を細分化し、それぞれを独立したアクティビティとして記録することで、精度の高いスケジュール管理が実現します。

上記表記ルールを厳守しなければ、正しいネットワーク工程表が作成できません。慣れないうちは複雑ですが、ルールをメモするなどしてネットワーク工程表に挑戦しましょう。

ネットワーク工程表に必要なクリティカルパスの計算方法

クリティカルパスは、プロジェクト全体の工期に直接影響を与える最も重要な作業の連鎖を意味します。効果的なクリティカルパス管理により、工期短縮とコスト削減が可能となります。

クリティカルパスの計算方法

クリティカルパスとは、プロジェクトの開始から完了までの最長の作業経路を意味します。この経路上の作業は、プロジェクト全体の工期に最も大きな影響を与える重要な作業群でで構成されています。

■最早開始時刻（ES）の算出

最早開始時刻は、各作業が最も早く開始できる時点を意味します。先行作業の終了時点を基準に決定され、プロジェクトの効率的な進行を計画する上で重要な指標となります。

■最遅開始時刻（LS）の算出

最遅開始時刻は、各作業の遅延が許容される最後の時点を示します。プロジェクト全体の工期に影響を与えない範囲での最大余裕時間を考慮して算出されます。

■トータルフロートの計算

トータルフロートは、作業全体の余裕時間を表します。最遅開始時刻と最早開始時刻の差を求めることで、各作業の柔軟性を評価できます。

■クリティカルパスの特定

トータルフロートがゼロの作業経路を抽出することで、プロジェクト全体の工期に直接影響する作業連鎖を明確化します。これらの作業は、プロジェクトの進行において最も注意深く管理し、ずれが生じないようにする必要がある点に注意しましょう。

ネットワーク工程表をエクセルで作成する方法

ネットワーク工程表をエクセルで作成する方法を紹介します。

作業一覧を整える

はじめに、着手から竣工までの全作業（工種）を洗い出し、「作業番号・作業名・先行作業・所要日数」の4項目で一覧表を作ります。

• A列：作業番号（A, B, C… または 1, 2, 3…）
• B列：作業名（基礎、鉄骨建方など）
• C列：先行作業（複数ある場合はカンマ区切り）
• D列：所要日数（4、6 など数値）

先行作業を空欄にした行が「開始イベント」に相当します。まずは漏れがないかを確認しましょう。

アロー図をオートシェイプで描画する

作業表が完成したらシートをもう 1 枚追加し、[挿入] → [図形] → [線／矢印] を利用してアロー図（イベント ○ と矢印 →）を手描きします。

• 円形（イベント）を左から右へ番号順に配置
• 円と円を矢印でつなぎ、線の上に作業番号、下に日数を入力
• 依存関係が重なる所は点線矢印で“ダミー”を表現

PowerPoint で描いて貼り付けても構いません。

作業5～10件程度なら 10 分ほどでレイアウトできます。

所要日数セルに簡易な計算式を挿入する

アロー図とは別に「工程計算用シート」を作成し、以下の項目を計算していきます。

• 最早開始（ES）＝先行作業の最早終了の最大値
• 最早終了（EF）＝ ES ＋ 所要日数
• 最遅終了（LF）＝後続作業の最遅開始の最小値
• 最遅開始（LS）＝ LF － 所要日数

IF・MAX・MIN などの関数で算出し、自動で計算できるように設定しましょう。

クリティカルパスをExcelで自動計算する関数例

自動計算でクリティカルパスを計算する方法もあります。

たとえば、上記の図であれば最遅開始から最早開始を差し引いたものが「0」になる場合がクリティカルになるため、H列「余裕日数」に以下の数式を挿入します。

数式：=F2-D2      ‘最遅開始(LS) – 最早開始(ES)

次に、L列に以下の数式を挿入すればクリティカル判定されたものにのみ「★」が表示されます。

=IF($H2=0,”★”,””)

以上の工程で作業を遅らせてはいけない工程が一目でわかり、より簡単にネットワーク工程表を作成できるため、活用してみてください。

ネットワーク工程表を作れる無料テンプレート

ネットワーク工程表を簡単に作成できる無料テンプレートとソフトを紹介します。

Money Forward

Money Forwardでは、ネットワーク工程表のエクセルテンプレートを公開しています。基本的な工程表のテンプレートがDLでき、そのうえにアロー図を貼り付けるだけでネットワーク工程表を完成させられます。

工事現場に特化した工程表ではありませんが、汎用性の高い工程表を使ってみたい方におすすめです。

施工屋ドットコム

施工屋ドットコムでは、建築工事向けのエクセルテンプレートを多数公開しています。ネットワーク工程表に対応したテンプレートもDLできます。

すべての工事に対応しているわけではありませんが、シンプルな作りでエクセルが得意でない方でも比較的操作しやすいテンプレートです。

ネットワーク工程表に関するよくある質問

ネットワーク工程表に関して、よくある質問をまとめました。

ガントチャートとネットワーク工程表はどちらが使いやすいですか？

実務では、両方を併用するケースも多く見られます。計画初期段階ではネットワーク工程表で依存関係を整理し、現場での日々の管理にはガントチャートを活用するといった使い分けが効果的です。

比較的短期の工事にはガントチャートが、大規模で複数の作業が並列するような現場ではネットワーク工程表を使うと良いでしょう。

クリティカルパスが複数になる場合はどうしたらいいですか？

大規模または複雑な建設プロジェクトでは、クリティカルパスが複数存在することがあります。これは「パラレル・クリティカルパス」と呼ばれる状況です。

この場合は各クリティカルパスに優先順位をつけ、特に重要なクリティカルパスに対してバッファを設けるなどして遅延のリスクに備えましょう。また、各クリティカルパスに対して問題が発生した際の対処法を考えておくなどして、リスク管理をしながら工程表を作ります。

工務店向け業務効率化システム「AnyONE」で現場に最適な工程管理を実現

ネットワーク工程表は計画段階で依存関係やクリティカルパスを把握するのに有効ですが、日々の現場運用では「誰が・いつ・どこで・どれくらい進んだか」を直感的に共有できるガントチャートが主役になります。
実際、多くの中小工務店ではエクセルや紙でガントチャートを回していますが、最新版の行き違いや修正反映の遅れがボトルネックになりがちです。

そこで、現場運用の中心であるガントチャートを「素早く・正確に・共有できる」仕組みが必要です。

AnyONEは、その要件を満たす工務店向けの業務効率化システムです。マウス操作だけで工程表を作成でき、休日表示の切替や日程変更も即時反映。現場・事務所・協力会社が同一の最新工程をリアルタイムで確認できるため、手戻りや連絡ミスを大幅に抑えられます。

さらに実行予算、発注・支払、請求と連動し、工程の遅れが粗利に与える影響も可視化。工程管理を“スケジュール表”から“利益を守る仕組み”へ引き上げます。

AnyONE導入事例：宮崎環境設計有限会社

宮崎環境設計有限会社様では、工事情報の管理が複数ソフトに分散していたり、エクセルで作成した工程表も日付のずれや修正の手間が多く、大きな負担となっていました。
AnyONE導入後は工事情報をクラウドで一元化し、見積〜契約〜発注〜請求・入金までをワンストップで可視化。発注履歴と請求照合がスムーズになり、部署間の連携ミスも大幅減しています。

工程表はテンプレートと基準日自動反映で短時間作成・一括シフトが可能になり、アフターは設備情報・点検履歴まで管理できる体制に。今後はCAD連携の積算オプションを活用して、見積から実行予算までのフロー一本化を目指しています。詳しくはAnyONE導入事例「工程表をカンタン作成・工事情報の一元化で業務効率アップと負担を軽減」をご覧ください。

まとめ

ネットワーク工程表は、工事全体の流れやクリティカルパスを明確にし、効率的な計画とリスク管理を可能にする手法です。ただし、習得には専門知識が必要で、現場の日常運用にはガントチャートの方が適しています。

特に中小規模の工務店では、工務店向け業務効率化システム「AnyONE」を活用することで、ガントチャート工程表をリアルタイムに作成・共有でき、現場の効率化と利益確保を両立できます。
まずは無料の資料請求・デモで使い勝手をご確認ください。

---

記事監修：佐藤主計
保有資格：1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。

---