【建設業】法定福利費の算出方法とは?ざっくり費用を割り出す方法や書き方
工事見積書は、工事の仕様書や特記仕様書、設計図書などに基づき、工事を受注したい業者が工事金額を算定するものです。
競争で入札に参加する場合はもちろん、随意契約で受注が決まっている場合でも、工事で適正な利益を上げることができるかどうかを決める施工前の最重要な書面です。
この記事では、工事見積書の概要と重要性、工事見積書の構成と内容、工事見積書作成のポイントについて解説します。ぜひ最後まで読んで、工事見積書の作成の参考にしてください。
INDEX
工事は、大きく公共工事と民間工事の2つに分けることができます。
公共工事は国や自治体などの官公庁、公共法人などが発注する工事で、税金によって賄われます。これに対して民間工事の発注者は個人や民間企業で、それぞれが資金調達した財源が原資です。
工事見積書は、公共工事と民間工事で対応が大きく異なります。公共工事では設計図書の内容が絶対であり、指定・任意の区分も見積金額に大きく影響します。一方、民間工事では設計図書の詳細度が異なることが多く、特に見積条件や施工中のリスク管理について、事前の十分な協議が必要です。
公共工事と民間工事の工事見積書の違いについて解説します。
公共工事において、入札参加資格をもつ業者は、見積用に公表された設計図書に基づいて見積を行います。この設計図書に記載された内容は絶対で、業者の判断で変更することはできません。
公共工事の設計図書を検討するときに注意しなければならないのが、仮設や施工方法に指定があるか、任意なのかという点です。
指定があれば設計書の通り施工を行わなければなりませんし、任意であれば請負者の責任において自由に施工することができます。指定と任意では、見積金額に違いが生じることが多いです。
ただし、当初の施工上の条件に変更があれば、設計変更を申し入れることは可能です。そのため指定・任意にかかわらず、施工条件を明確にしておく必要があります。
また最近の公共工事では、入札金額、過去の施工実績、技術提案などを数値化して落札業者を決める「総合評価落札方式」が一般的になりつつあります。
この方式では、入札金額が一番低くても、実績や技術の数値が低くければ落札できません。
民間工事においても、工事見積書作成における設計図書の重要性は同じですが、公共工事ほど内容が詳細でない場合が多いので注意が必要です。
特に見積の前提になる条件や施工中のリスク管理について、不審点があれば十分な協議をしておかなければなりません。契約が完了してからの工事内容や金額の変更は難しいです。
民間工事でも一定規模以上の工事であれば、設計事務所やコンサルタント会社が設計書や図面、仕様書を作成して工事を発注します。
しかし小・中規模の工事では、工事見積書を作成する建設業者が詳しく現地を調査して、見積条件書や施工図などを準備することが多々あります。
また工事着手前後に、発注者サイドからVE案を求められることも多いです。VE案とは、性能や品質を下げずにコストを抑える提案のことです。
発注者にとって工事見積書は、その建設業者と工事契約を締結して発注するかの判断材料となる重要な書類です。工事見積書が重要である理由を2点説明します。
Link_見積書に法的効力はある?見積書が必要な3つの理由も解説
工事見積書を確認することで、以下のことが把握できます。
●工事費用の金額と内訳
●工事の内容や流れ
●使用する材料や数量
●必要になる経費
逆に、以上のようなことが把握できないと良い見積書とは言えません。
工事見積書で工事の詳細を可視化することで、発注者はもとより仕入先や社内スタッフとも工事内容を確実に共有できます。
工事見積書作成者は、作成後、工事見積書の内容について社内スタッフと協議します。内容に不備はないか、利益率は無理な設定ではないかなどです。
それに前後して、仕入先に、材料の納入金額や納期などを確認して仕上げます。
このような段取りを踏んだ後に、発注者に工事見積書を提示して、落札か不落札かの判断を委ねることになります。
工事見積書という書面で工事内容の詳細を残しておくことは、施工開始後に何かトラブルが生じたときの「言った・言わない」などのトラブルを回避することにつながります。
たとえば長期の豪雨により地盤が軟弱になった、図面にはなかった埋設管が出てきた、近隣からの苦情で施工時間が限定されたなどのトラブルです。
このようなトラブルが発生したとき、工事内容を可視化した見積条件書や見積内訳書があれば、お互いに納得のいく形での費用や工期の変更がしやすくなります。
工事見積書自体には、契約書や発注書・請書などのような法的効力はなく、必ず発行しなければならないという義務もありません。しかし商慣習として、自社と取引先との信頼関係のベースになる重要な書面となっています。
この重要性を理解するためには、工事見積書を構成する見積表紙、見積内訳書、見積条件書の内容の把握が必要です。
工事見積書は、見積表紙、見積内訳書、見積条件書の3つで構成するのが一般的です。発注者が工事の全容を把握できるように作成します。
工事見積書の見積表紙には、工事の概要が一目で分かるように記載します。主な記載事項は以下の通りです。
●発注者名(指定された提出先名)
●発行日付
●工事名
●見積合計金額
●見積書の有効期限
●工事場所
●工期
●見積書を作成した会社名・住所・代表者など
表紙となる1ページ目に、工種ごとの小計を直接工事費として合計し、経費の金額を費目ごとに算出して共通費計とし、全体の合計金額を工事価格として記載する場合もあります。
工事の規模が大きくなるほど詳細は複雑になり、全体像が分かりにくくなるので、このような書式にすることが多いです。
見積内訳書は、直接工事費と共通費及び消費税等相当額で構成されています。直接工事費も共通費も、さらに細かい費目に区分されます。
直接工事費は、工種ごとに使用される材料の名称や内容、数量や単価、合計金額を積上げて算出するのが一般的です。
また工種は、工事の流れに沿って記載されることが多いです。たとえば、仮設工事、基礎工事、躯体工事、外装・内装工事、各種設備工事などの順になります。
こうすることで発注者は、各工種の内容の詳細や費用を知るとともに、工事の進み方の概要を理解することができます。
見積条件書は、工事見積書の内容が発注者の提示する条件を満たしていることを確認するためのページです。
見積条件書は、基本的に発注者サイドが作成します。工事範囲に含める項目と含めない項目を明確にし、発注者が意図する見積対象範囲や施工条件を見積作成者に正確に伝えるための書面です。
また見積作成者にとっては、見積条件が正しく伝わったことを確認するためのチェックリストとしての役割を持つことになります。
見積書提出時には、見積作成者が見積書に添付する必要があります。発注者が作成したものを、そのまま添付することが多いですが、自社のフォーマットに合わせて書き直して作成する業者もいます。
工事見積書は工事費を算定し、発注者に提示するものです。公共工事の工事費の構成は以下のようになり、民間工事においても一定以上の規模では、これに準じていることが多いです。
引用元:国土交通省|工事費の構成
上記の表の通り、工事費の工事原価は、直接工事費と共通費の合算ということになります。
工事見積書作成のポイントは、直接工事費の精確性と共通費の計上方法になりますが、工事特性の把握と作成の効率化も重要です。以上の4つのポイントについて解説します。
直接工事費を算出するにあたってのポイントは、労務費、材料費、車両費、建設機械費などは最新のデータに基づいていなければならないということです。
特に材料の価格は、社会情勢や気候変動などの影響を受けやすいため、最新の建設物価や積算資料を活用するのはもとより、直接メーカーや商社に金額や納期の確認をすることが重要です。
公共工事においては、「公共建築工事共通費積算基準」の定めにより、共通仮設費、一般管理費、現場管理費などを算定します。
共通仮設費は直接工事費に対する比率、現場管理費は純工事費に対する比率、一般管理費は工事原価に対する比率で算出します。共通費には基準となる算定式があるため、それを参考にします。
民間工事では、共通費を諸経費とすることが多いです。諸経費の内容や金額は、公共工事のような明確な基準はなく、過去の取引実績や、社内外の状況判断により変わることがあります。
建設工事には、工事条件により難易度が高くなり、費用が割高になることも多いです。建築物の形状が複雑だったり、掘削地盤の地下水位が高く排水設備が必要になったりする場合、工事見積書の価格も変動します。
当該工事の立地条件や周辺状況、建築物や土木構造物の形状など、工事の特性をしっかり把握して工事見積書を作成することが必要になります。
工事見積書の作成は、材料や施工方法の知識が必要であり、それ相応の手間と時間がかかります。作成の効率化のため、ネット上の無料版の工事見積ソフトを使ったり、エクセルやワードで作成してデータ保存して活用したりしている方も多いでしょう。
しかし無料版のソフトの機能は非常に限定的で、実際に全社的に運用するためには想定外の費用がかかることも多いです。またエクアセルやワードのデータでは利益管理や発注管理と同期させることは難しいでしょう。
そこでぜひ検討していただきたいのが、建設業に特化し、導入から運用まで徹底したサポートのある業務ソフトです。
工事見積書の提出前には、複数の重要な確認事項があります。まず最も重要なのが、工事金額の総額と内訳の合計が一致していることです。単純な計算ミスが後々大きなトラブルを引き起こす可能性があるため、必ず複数人でのチェックを行いましょう。
また、諸経費が工事費全体の5-10%程度という適切な範囲で計上されているかも重要な確認ポイントです。見積書の有効期限は一般的に2-3週間とされており、これを明記することで材料価格の変動リスクに対応できます。
見積書作成時に見落としやすい条件として、施工現場特有の制約があります。特に市街地での工事の場合、車両の進入制限や作業時間の制限が工事費用に大きく影響します。
また、産業廃棄物の処理費用や近隣対策費など、工事本体以外にかかる費用も漏れなく計上する必要があります。季節要因による追加費用、特に雨期や冬期の場合は、養生費用や除雪費用なども考慮に入れましょう。
見積書での表現方法には特に注意が必要です。「一式」という表現を使用する場合は、必ず備考欄に具体的な内容を記載します。
また、見積りに含まれない除外工事項目は、明確に記載することでトラブルを防止できます。材料の仕様変更の可能性がある場合や、追加工事が発生した際の精算方法についても、あらかじめ明記しておくことが重要です。
建設業法第20条では、建設工事の見積りに関する重要な規定が定められています。特に重要なのは、工事内容に応じた適正な見積期間を確保することです。
また、見積条件を明示し、最終的には書面での契約締結が必要となります。国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」を参考にして、正しい内容を記載しましょう。
法定福利費は近年特に重要視されている項目です。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料などを適切に計上する必要があります。国土交通省の指針によれば、一般的な計上率として、健康保険・厚生年金保険は労務費の15〜17%程度、雇用保険は0.8〜1.0%程度とされています。これらの費用は見積書に明示的に記載することが推奨されています。
2024年1月以降、電子データとして保存する見積書には、特定の要件を満たすことが求められています。具体的には、データの改ざん防止措置の実施、タイムスタンプの付与、効率的な検索を可能とする機能の確保などが必要です。また、バックアップデータの保存も重要な要件となっています。
工事見積書に関してよくある質問をまとめました。
工事見積書は依頼主に対して提示する書類で、工事費用の見積もりを詳細に記載した書類です。内訳書は見積書に含まれる内訳を記載した書類です。そのため、内訳書は工事見積書に含まれる書類の1つと考えて良いでしょう。
見積仕様書とは工事の詳細な仕様を記載した書類です。設計図に基づいて作られており、施工者に対して施工方法を指示する目的で作成されます。そのため工事見積書とは役割、内容ともに異なる書類です。
業界を熟知した建材会社が監修している建設業向け業務効率化システム「AnyONE」は、建設業の業務に幅広く活用でき、導入実績は3300社を超えています。
AnyONEは見積書の作成を効率化するあらゆる機能が搭載されているだけでなく、実行予算や発注管理などの各種帳票をエクセルのような操作感で作成できます。
データを最新の状態で、1つのシステムで社内共有できるため、工期の進捗管理にタイムラグがなくお金の流れが明確になります。
粗利益をタイムリーに把握できるようになり、粗利益の状態をすぐに把握できると、計画とずれがあった際にすぐ対策を講じることが可能です。
本記事では、工事見積書について以下のことを解説しました。
●公共工事と民間工事での違い
●工事見積書の重要性
●工事見積書の構成と内容
●工事見積書作成のポイント
工事見積書は、工事を施工する上で発注者との信頼関係のベースになり、合意した施工範囲の証拠となる重要な書面です。
この重要な工事見積書の作成は、非常に手間がかかります。AnyONEをはじめとした業務効率化システムを活用すれば、短時間で効率的に作成が可能です。
ただ業務効率化システムの導入を検討している方の中には、AnyONE以外のシステムについても知りたいという方もいるでしょう。
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記事監修:佐藤主計
保有資格:1級造園施工管理技士、2級土木施工管理技士
建設業界に携わり30年。公共工事の主任技術者や現場代理人をはじめ、造園土木会社の営業マン・工事担当者として、数万円から数千万円の工事まで幅広く担当。施工実績は累計約350件にものぼる。
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