ウッドショックの原因と国産材の課題!工務店の対応策は?

ウッドショックの原因と国産材の課題!工務店の対応策は?

新型コロナウイルスの影響は、国内で木材の調達が困難になる「ウッドショック」に拍車をかけています。工務店に勤める方の中にも「木材がなかなか手に入らない」、「工期に間に合うのかわからない」といった不安を抱えているケースも少なくないでしょう。

この記事では、ウッドショックが起こっている原因と日本が抱える課題、工務店が取るべき対策について解説します。

ウッドショックが起こった原因

ウッドショックが起こった原因

ウッドショックとは、主に住宅の梁や柱に使用される木材の調達が困難になることです。
林野庁によると、日本はもともと柱材や横架材で使用する木材を輸入に頼っていました。2019年には柱材の約6割、横架材の8割以上を海外から輸入しています。

【出典】木材産業の現状と課題-林野庁_01

【出典】木材産業の現状と課題-林野庁

このような輸入への依存に加えて、新型コロナウイルスの影響で需要と供給のバランスが崩れ、価格が高騰したために、調達がより困難になっている状況です。

ここでは、なぜウッドショックが起こったのか、具体的な原因について詳しく解説します。

  アメリカにおける住宅着工戸数の急増

ウッドショックが起こった原因の1つに、アメリカにおいて住宅着工戸数が増加したことが挙げられます。

新型コロナウイルスの影響により、アメリカでは経済活動活性化に向けて、金利を大幅に下げる対策を行いました。また、コロナ禍における在宅ワークやリモートワークが普及したことで、住宅建築の需要が高まりました。
その結果、需要と供給のバランスが崩れ、木材の価格が高騰しウッドショックにつながっています。

  中国における木材需要増大

建築ラッシュによる木材需要の増大は、アメリカだけでなく中国でも起こっており、ウッドショックの原因となっています。中国は新型コロナウイルス後の経済復興に向けて、建築ラッシュが始まっており、木材に対する需要が高い状況です。木材を世界中から集めているともいわれ、アメリカにおける木材需要の高まりによる木材不足に追い打ちをかけているといえるでしょう。

  世界的なコンテナ不足

アメリカ、中国における木材の需要増加に加え、世界的なコンテナ不足もウッドショックを引き起こした原因の1つだと考えられています。

新型コロナウイルスの影響で、各国の経済が停滞し、船舶での輸送量が減少しました。経済不振に追い込まれた船会社はコンテナを売却・返却することとなり、コンテナが不足する事態が発生しています。
コンテナが不足すると、運送コストが増大するため、結果的に木材の輸入にかかるコストも増大してしまいます。
さらに、2021年3月に発生したスエズ運河での大型コンテナ船座礁事故による混乱もさらなる供給不足につながっていると考えられるでしょう。

このように、新型コロナで落ち込んだ経済を回復させるために、建築ラッシュが起こっているものの、コンテナが不足しているためコスト高で調達が困難になっていることが、ウッドショックの大きな原因となります。

国産材の供給を増やせない4つの理由

国産材の供給を増やせない4つの理由

「輸入による木材の調達が難しいなら、国内で調達すればいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、これは決して簡単ではありません。
ここでは、なぜ国産材の供給を増やせないのか、その原因について解説します。

  国産材の自給率は37.8%

林野庁によると、日本の木材自給率は令和元年時点で37.8%となっています。

【出典】木材産業の現状と課題-林野庁_2

【出典】木材産業の現状と課題-林野庁_3

【出典】木材産業の現状と課題-林野庁

日本における木材の供給量は、長年減少し続けていましたが、近年では需要とともに回復傾向にあります。
しかし、生産された国産材は、製材用途のものが31%、合板用途のものが13%、そしてパルプ・チップ用途のものが38%となっており、建築用の木材の生産量が増えているわけではありません。そのため、国産材の調達にも限界があるといえます。

  国産材は強度が弱い

国産材は、アメリカやヨーロッパの木材と比べて強度が弱いため、梁や土台などには適していません。
もし国産材を使って家を建てるとなると、場合によっては設計を変更する必要も出てくるでしょう。国産材は建築に使えるものが少ないため、供給を増やせないのが現状です。

  補助金問題

国産材を作り出すために、林業者は補助金を利用しており、あらかじめ定められた量の木しか伐採できないため、急に供給量を増やすことはできません。
もし、補助金なしで伐採し国産材を作るとなると、林業者は自社で赤字を負担することとなります。そのため、需要が高まっているからといって、補助金のない状態で国産材を作ることはできないのが現状です。

  乾燥機の台数不足

くらたくさんの木を伐採したとしても、乾燥機が不足しているため、国産材の供給を増やせません。建築用の木材は、製材後に乾燥させる必要があり、乾燥が不十分だと木の収縮や変形が起こり、家づくりに影響します。そのため、国産材を作るにあたっては、入念に乾燥させなければなりません。

木材の乾燥方法には大きく分けて太陽光と風で乾燥させる「天然乾燥」と、乾燥機を使用する「人工乾燥」があります。天然乾燥は1年以上の期間がかかるため、すぐに供給量を増やすことはできません。また、人工乾燥は数日〜数週間程度で乾燥が完了しますが、乾燥機がこれまでの供給量に合わせた数しか用意されていないため、供給量を急に増やすことは困難です。

【工務店】ウッドショックへの対応

【工務店】ウッドショックへの対応

ウッドショックの状況において、工務店が注意しなければならないのが、施主様への対応と資金の確保です。ここでは、具体的にどのような対応をすべきなのか解説します。

  施主様への説明と合意書作成

ウッドショックの状況下では、木材の調達が困難になるため、事前に施主様に対する説明を行い、合意書を作成しましょう。
例えば、木材の調達に時間がかることや木材の価格高騰により予算を超えてしまうため、樹種の変更を強いられるケースや工期を延長するケースもあるでしょう。
そのようなケースに備え、合意書を用意し、樹種や工期の変更、工期変更に伴う遅延損害金請求の取り扱いなどに関して、施主様からの合意を得ておきましょう。合意のないまま工事が始まると、場合によっては工務店側の費用負担が大きくなりかねないため注意してください。

  日本政策金融公庫に事業資金相談

木材の調達にかかる資金に関しては、日本政策金融公庫に相談しましょう。ウッドショックにより木材の価格が高騰したことで、資金繰りに苦労している企業も少なくないはずです。国土交通省では、業界団体に対して資金繰りに対応するように通知しており、日本金融公庫では資金繰りが難しくなった工務店などから相談を受け付けています。
これまで日本政策金融公庫からの借り入れ経験がない工務店でも、建設業許可が不要となる事業規模の工務店でも相談可能となっているため、一度相談してみるといいでしょう。

まとめ

ウッドショックの原因と国産材の課題

今回は、ウッドショックの原因と、日本の国産材が抱える課題、さらには工務店が取るべき対応について解説しました。ウッドショックは新型コロナウイルスの影響による経済の落ち込みと、回復を図るための建築ラッシュ、さらに輸入への依存という日本の体制が原因となって引き起こされています。国産材を急に増やすことはできない状況であるため、施主様との合意を得るようにし、必要に応じて事業資金相談を行うなどして対応しましょう。

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