建設業会計とは?簡単に行う方法や業務の特徴、勘定科目

建設業会計とは?簡単に行う方法や業務の特徴、勘定科目

建設業界では、一般企業とは異なる手法で会計を行わなければなりません。
これを「建設業会計」と呼びます。
商業簿記や工業簿記とは、勘定科目の名称や使い方も異なります。

今回は、建設業会計の概要やメリット・デメリット、勘定科目について解説します。

建設業会計とは

建設業会計とは

ここでは、建設業会計が一般企業の会計と異なる理由と、建設業会計のメリット・デメリットについて解説します。

 一般企業の会計と異なる理由

「建設業会計」では、通常の企業会計とは異なる手法が採用されています。
なぜ、建設業界で特殊な企業会計を行うかといえば、商品・サービスを提供する期間と関係しています。

一般企業では、商品・サービスを作ってから売るまでの期間は数ヶ月ほどです。
しかし建設業では、着工から完成・引き渡しまで短くて数ヶ月、長くて1年以上かかります。

一般企業は毎年、自社の業績を投資家に報告することとなっています。
その業績に基づき、投資家への配当額が決まったり、追加の投資を受けることができます。

しかし、完成まで一年以上かかる工事現場では、一年間中に会計を終えることができません。
こういった工事現場がいくつも重なると、会計は複雑化し、正確な業績の報告を投資家に行えなくなってしまいます。

そこで考えられたのが「建設業会計」という業界独自の会計手法です。
「建設業法」という法律に定められており、建設業者はこれに従わなければなりません。

実際に一般企業の会計と建設業会計では、貸借対照表における勘定科目に違いがあります。

▼一般会計における貸借対照表

▼建設業会計における貸借対照表

このように会計手法の違いにより扱う勘定科目も異なるため、会計処理には注意しなければなりません。

 建設業会計のメリット・デメリット

建設業会計は、一般の「商業簿記」や「工業簿記」と異なります。
それによるメリット・デメリットを解説します。

  建設業会計のメリット

建設業会計では、「工事進行基準」を導入しています。
工事進行基準では、工事現場が完成したタイミングで売上高を計上せず、工事現場の進捗に合わせて行います。

たとえば、3年間かかる工事現場で完成時に計上すると、1〜2年目は売上高を計上できません。
1〜2年目は、売上高がゼロと判断され、決算書で赤字申告をしなければならないこともあるでしょう。
投資家や金融機関からマイナス評価を受け、不利になりかねません。

しかし、工事進行基準を採用することで、正しい会計状況を示すことができます。

  建設業会計のデメリット

この工事進行基準は、ある条件を満たす工事現場について、処理が義務づけられています。
申告漏れのないよう注意しなければなりませんが、数年間にもわたる工事現場では、売上高も多額となるため、処理せざるを得ないともいえます。

一方で、工事進行基準は、「進捗状況をどう評価するか」「工期をどう設定するか」により決まるため、あいまいな部分も多く、不正リスクを伴います。
会計監査機能を正常に機能させ、正しい会計報告を行う必要があるでしょう。

建設業会計における勘定科目

建設業会計における勘定科目

建設業会計には、通常会計とは異なる勘定科目が設けられています。
ここでは、それらの科目がどういったものなのか解説します。

▼通常会計とは異なる勘定科

  • 完成工事高
  • 完成工事原価
  • 完成工事総利益
  • 未成工事支出金
  • 完成工事未収入金
  • 未成工事受入金
  • 工事未払金

 完成工事高

建設業会計の「完成工事高」は、商業・工業簿記の「売上高」に当たります。
工事現場の完成・引き渡し時に得られる収益のことです。

▼50,000千円で契約していた建物の工事が完了し、引渡しした場合における完成工事高を計上した場合

 完成工事原価

建設業会計の「完成工事原価」は、商業・工業簿記の「売掛金」に当たります。
工事現場にかかる原価のことです。
工事原価は、材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けられます。

▼工事進行基準が適用された工事契約において、引渡し完了に伴い20,000千円の未成工事支出金を完成工事原価に振り替えるときに計上した場合

工事原価について詳しく知りたい方は、工事原価の管理方法を解説している記事もご覧ください。

【工事】原価管理とは?必要性やシステムの選び方を解説

【工事】原価管理とは?必要性やシステムの選び方を解説

 完成工事総利益

建設業会計の「完成工事総損益」は、商業・工業簿記の「売上総損益」に当たります。
完成工事高(売上高)から、完成工事原価(売掛金)を差し引いて算出します。
建設業者の粗利益を表します。

 未成工事支出金

建設業会計の「完成工事総利益」は、商業・工業簿記の「売上総利益」に当たります。
完成工事高(売上高)から、完成工事原価(売掛金)を差し引いて算出します。
建設業者の粗利益を表します。

▼材料費2,000千円、労務費2,000千円、経費1,000千円で未成工事支出金を計上した場合

粗利益について詳しく知りたい方は、粗利益率の高め方について解説している記事をご覧ください。

 完成工事未収入金

建設業会計の「完成工事未収入金」は、商業・工業簿記の「売掛金」に当たります。
工事現場は完成しているものの、入金が翌期になる場合に使います。

▼完成工事未収入金のうち、5,000千円を当座預金に入金されて計上した場合

 未成工事受入金

建設業会計の「未成工事受入金」は、商業・工業簿記の「前受金」に当たります。
工事現場の完成前に、顧客から入金された場合に使います。

▼未成工事受入金として、5,000千円を当座預金に入金されて計上した場合

 工事未払金

建設業会計の「工事未払金」は、商業・工業簿記の「買掛金」に当たります。
工事現場が進行中で、未払いの原価額を示します。

▼進行している最中の工事で材料費・外注費がそれぞれ1,500千円発生し、工事未払金を計上した場合

建設業における収益と費用の計上基準

建設業における収益と費用の計上基準

建設業会計での収益・費用の計上には、工事完成基準と工事進行基準があります。ここでは、それぞれがどのような工事に使われるのかなど、特徴を解説します。

 工事完成基準

「工事完成基準」とは、工事現場で発生した費用の計上を、完成後にまとめて行うことです。
工事現場でかかった費用を「未成工事支出金」(仕掛金)として計上し、完成後に「完成工事高」(売上高)から差し引き、利益を確定させます。

着工から完成・引き渡しが短く、1年中に収まる工事現場で採用される基準です。
工事進行基準よりも契約がシンプルとなり、スピーディーに着工できます。

最終的には正しい利益を算出できる一方で、工事進行中は費用や売上があいまいになります。そうすると、追加の発注・修正があっても、売上に反映されないことがあり、受注側はリスクを伴います。

「工事進行基準」が広まる前は、この基準が主に採用されていましたが、数年にわたる大規模な工事現場には不向きだったこともあり、現在では部分に採用されています。

 工事進行基準

「工事進行基準」とは、売上高の計上を工事現場の進捗に合わせて行うことです。
前述の通り、工事の進行中に合わせて費用や売上を計上するため、実質的な利益を把握することができます。
2009年からは、原則として、工事完成基準ではなく工事進行基準が採用されています。

なお、一定の要件を満たす企業は、2021年4月より「収益認識基準」に切り替わる予定です。
詳しくは、企業会計基準委員会の資料をご確認ください。

建設業会計にはソフトがおすすめ

建設業会計にはソフトがおすすめ

建設業者は、一般企業と会計手法が異なります。
商業・工業簿記を学んだ経理担当者であっても、独自の会計基準が分からず、ミスやトラブルも起こりかねません。
自社内で建設業会計を行う場合は、その基準に沿った会計ソフトを利用することが望ましいでしょう。

建設業会計対応の会計ソフトを解説した記事を参考にしてください。

建設業会計ソフトの導入理由と選び方!おすすめのソフトも

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建設業界に特化したソフトでは、会計に限らず、顧客管理や現場管理といった機能もついています。

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まとめ

建設業界では、独自の「建設業会計」を採用することで、企業の業績を正しく報告し、評価を受けることで、健全な経営を行うことができます。
繰り返しとなりますが、「工事完成基準」と「工事進行基準」の2つを使いこなすことで、工期の長い工事現場であっても対応することができます。

特有の勘定科目や基準に沿った会計処理には、手間がかかるでしょう。
建設業界特化の会計ソフトを活用しながら、ミスやトラブルの発生を防ぐ会計処理を進めてはいかがでしょうか。
下記のコンテンツでは、建設業界の会計処理に役立つシステムを4つ紹介しています。それぞれの機能を比較しているため、会計処理を効率化したい方はぜひ参考にしてください。

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