【建設業】法定福利費の算出方法とは?ざっくり費用を割り出す方法や書き方
建設業や工務店にとって、見積金額の計算方法は業績を大きく左右する重要な要素です。
適切な見積書作成は、施主からの信頼獲得だけでなく、利益の確保にも直結します。
しかし、多くの工務店では見積金額の計算に課題を抱えています。
実際、見積書作成は電卓で計算すると計算ミスが発生しやすく、後にトラブルの原因となってしまうことも少なくありません。
本記事では、見積金額の基本的な考え方から具体的な計算方法、効率的な見積書作成のコツまで詳しく解説します。
INDEX
見積金額は建設・建築業において、受注の成否や利益率を左右する重要な要素です。
適切な見積金額の設定は、実際に得られる利益に直結するだけでなく、施主との信頼関係構築にも大きく影響します。
ここでは、見積金額の基本概念から具体的な計算方法まで詳しく解説します。
見積金額とは、工事やサービスの提供に対して事前に計算・提示する金額のことです。見積書は、施主様と工務店が取引条件を交渉し、受注を判断するための重要な資料となります。
ビジネスの取引は、一般的に以下の流れで進みます。
見積り→受注→納品→検品→請求書の発行→入金→領収書の発行
つまり、見積書はビジネスの最初に発行される証憑であり、この段階で適切な金額設定ができているかが利益に直結します。
見積金額の計算において最も重要なのは、原価と利益のバランスです。原価を正確に把握せずに見積金額を算出すると、思わぬ赤字を招くことになりかねません。
見積金額の構成要素は以下のとおりです。
●直接原価:材料費、労務費、外注費など工事に直接関わるコスト
●間接原価:現場管理費、一般管理費など
●利益:工事で得る企業の収益
適正な見積金額を設定するためには、これらの要素をバランスよく組み合わせる必要があります。
適正な見積金額を決めるためには、以下のポイントを押さえましょう。
●原価の正確な把握
●市場相場の理解
●競合他社の価格設定
●自社の強みや付加価値
●顧客の予算や期待値
これらの要素を総合的に判断し、施主様に納得してもらえる金額設定を心がけましょう。
建設業や工務店の見積金額には、一般的な業種とは異なる独自の特徴があります。
工事内容や規模によって大きく変動する材料費、職人の技術や経験に左右される人件費、そして様々な諸経費を適切に把握することが重要です。
ここでは建設業特有の見積金額計算の特徴と、押さえておくべきポイントを解説します。
建設業や工務店における見積金額の計算では、材料費、人件費、諸経費の3つの要素が重要です。
材料費は、工事で使用する材料の費用です。
材料費は、原則として「仕入価格×数量」で算出します。
主資材にかかる費用だけでなく、副資材にかかる費用、これらを現場へ届ける運搬費を含む点がポイントです。
つまり、木材だけでなく金物や接着剤、これらの運搬にかかる費用も材料費に含まれるといえるでしょう。
材料費は、さまざまな要因で変動します。
たとえば、何かしらの理由で、特定の材料の需要が一時的に高まり、価格が高騰することもあります。
人件費は、工事に携わる職人などに支払う賃金や手当です。
見積におけるポイントは、作業ごとにかかる手間を正確に反映することといえるでしょう。
この点を疎かにすると、赤字になってしまう恐れがあります。
上記の目的で使用するのが、作業の手間を数値化した歩掛(ぶがかり)です。
歩掛で使用する単位を人工(にんく)といいます。
1人工は、1人の作業員が8時間で行える作業量です。作業ごとの人工は以下の計算式で求められます。
たとえば、作業員1人で2時間かかる作業Aは0.25人工((1人×2時間)÷8)です。
この作業の見積は、0.25人工を歩掛として算出します。
A作業が5件あれば1.25人工(0.25人工×5件)です。
ここに、職人などに支払う報酬単価を乗じれば適正な人件費を算出できます。
諸経費は、工事に直接関わらないが工事全体を進めるために必要となる費用です。主な諸経費には以下のようなものがあります。
●共通仮設費:工事の現場事務所や仮囲いのフェンス、仮設電気水道代など
●現場管理費:現場監督の給与や交通費、工事保険料など
●一般管理費:企業の事務所維持費、営業費用など
諸経費は一般的に工事原価に対する一定の割合(%)で算出されることが多く、建設業や工務店の規模や工事の内容によって異なります。
掛け率と歩掛についても理解しておきましょう。
基本的に、建設で使用する材料はメーカーから仕入れます。
資材を定価で販売しているメーカーはほとんどありません。
通常は、定価に掛け率を乗じて販売します。
たとえば、定価が10,000円、掛け率が50%であれば、実際の仕入価格は5,000円です。
掛け率は、取引相手や取引条件などで異なります。
掛け率が55%になったり、45%になったりすることがあるのです。
材料費は、掛け率をもとに算出する必要があります。
交渉で掛け率を下げられると利益を増やせます。
あるいは、利益を確保しながら値引き率を高めることもできるでしょう。
歩掛(ぶがかり)とは、単位当たりの作業に必要な労力や時間を数値化したものです。
正確な歩掛を把握することで、工期や人件費の見積りが適切になり、利益確保につながります。
例えば、50平方メートルの壁の塗装工事の場合の計算は以下のようになります。
●塗装工の歩掛:0.08人工/平方メートル
●必要人工:50平方メートル × 0.08人工/平方メートル = 4人工
●塗装工の日当:25,000円/人工
●人件費:4人工 × 25,000円/人工 = 100,000円
このように歩掛を活用することで、より正確な人件費の算出が可能になります。
粗利益率と原価率は、見積金額設定の重要な指標です。
粗利益率は、売上高に対する粗利益(売上高から原価を引いた額)の割合です。
粗利益率(%)=(売上高 – 原価)÷ 売上高 × 100
例えば、売上高が100万円、原価が70万円の場合: 粗利益率 =(100万円 – 70万円)÷ 100万円 × 100 = 30%となります。
原価率は、売上高に対する原価の割合です。
原価率(%)= 原価 ÷ 売上高 × 100
例えば、売上高が100万円、原価が70万円の場合: 原価率 = 70万円 ÷ 100万円 × 100 = 70%
粗利益率と原価率を合計すると常に100%になります。(上記例では30% + 70% = 100%)
原価率を基にした見積金額の算出方法
目標とする粗利益率が決まっている場合、原価から見積金額を逆算する方法があります。
例えば、原価が70万円で粗利益率30%(原価率70%)を目指す場合の計算方法を紹介します。
見積金額 = 原価 ÷ 原価率 = 70万円 ÷ 0.7 = 100万円
この計算方法を理解していないと、見積金額の計算を誤り、想定した利益を確保できない可能性があります。
そもそも、見積書とは、住宅の正式な注文を受けつけた際に発行する「証憑(しょうひょう)」のことです。
証憑とは、ビジネスにおいて発行される書類のことで、見積書だけでなく、注文書・納品書・請求書・領収書などの総称です。
まず、見積書の作成の流れについて解説します。
見積書の目的は、施主様と工務店、双方が取引条件を交渉したり、受注を判断したりするための資料とすることです。
ビジネスの取引は、一般的に以下の流れで進みます。
見積り→受注→納品→検品→請求書の発行→入金→領収書の発行
つまり、見積書は、ビジネスの一番はじめに発行される証憑です。
見積書をはじめとする証憑は、保存を義務づけられています。
見積書を作成するためのフォーマットは、法律上定められていません。
見積書を発行することで、双方の認識違いを防いだり、社内での情報共有を簡単にしたり、施主様の意思決定を促すことにつながります。
そのため、取引に関わる事項は必ず、取引条件について記載しなければなりません。
一般的には、以下の17項目を記載します。
・タイトル
・件名
・宛先
・見積書の通番(社内で管理用の番号)
・発効日・提出日
・発行者の情報(社名・住所・氏名)
・発行者の印鑑
・有効期限
・見積り金額
・品番・品名
・商品数量
・商品単価
・商品金額
・小計
・消費税額
・合計金額
・納期
工務店によって定めている記載事項は異なる可能性があるため、自社で一度確認を取ってみてください。
見積書を提示すると、施主様から値引き交渉をされることがほとんどです。
最初に掲示していた金額から、計算して変更することとなるでしょう。
住宅建設では、建材などを調達するため、必ず「単価×個数」といった計算をします。
そこで計算ミスが生じると、間違った見積書を発行してしまい、後々のトラブルの原因となる可能性が高いです。
電卓などを使い手動で計算する場合は、注意しなければなりません。
計算ミスを減らすためには、エクセルを活用した金額の自動計算をおすすめします。
見積金額の計算は建設業において最も重要なスキルの一つです。
誤った計算方法は利益の減少や赤字工事の原因となることもあります。
特に粗利益率と原価率の関係を正しく理解し、適切な見積金額を算出することが重要です。
この章では実務で使える具体的な計算方法と、よくある間違いの対処法を解説します。
手計算で見積金額を算出する場合、基本的には以下の手順で進めます。
仮設工事、躯体工事、仕上工事、設備工事などに工事を分類します。
次に各項目の原価を計算しましょう。計算式は以下のとおりです。
材料費:使用する材料の数量×単価
労務費:必要な人工×人工単価
外注費:外注する工事の費用
諸経費の計算もおこないます。よくある諸経費の例とパーセンテージは以下のとおりですが、工事によっても内容は変わるため、しっかり計算するようにしてください。
共通仮設費:原価の約3〜5%
現場管理費:原価の約5〜8%
一般管理費:工事原価の約3〜5%
目標とする粗利益率に基づいて、利益を加算します。
例えば、ある内装工事の見積金額を計算する場合は、以下のような計算となります。
材料費:500,000円 労務費:300,000円 外注費:200,000円 直接工事費合計:1,000,000円 諸経費(15%):150,000円 工事原価:1,150,000円 目標粗利益率:30%(原価率70%)見積金額:1,150,000円 ÷ 0.7 = 1,642,857円(切り上げて1,650,000円) |
このように、項目ごとに積み上げて計算することで、根拠のある見積金額を算出することができます。
利益率を正確に計算することは、見積金額設定において非常に重要です。多くの工務店が陥りがちな誤りは、原価に単純に利益率をかけるという方法です。
【よくある間違い】
原価が100万円で、20%の利益を確保したい場合: 100万円 × 1.2 = 120万円と計算してしまう。
この計算だと、見積金額に対する利益率は約16.7%(20万円 ÷ 120万円)にしかなりません。
【正しい計算方法】
原価が100万円で、20%の利益率(売上に対して)を確保したい場合: 100万円 ÷ 0.8 = 125万円が正しい。
この計算だと、見積金額に対する利益率は20%(25万円 ÷ 125万円)となります。
原価率と利益率の関係を理解し、目標とする利益率から見積金額を逆算することが重要です。
施主からの値引き要請は建設業界では避けられません。
しかし、適切な対応策を講じることで、利益を守りながらも顧客満足を実現することが可能です。
まず重要なのは、見積書の内訳を詳細に示すことです。
項目ごとの単価や数量を明確に記載し、工事にかかる実際のコストを透明化することで、不当な値引き要請を抑制できます。
施主が内訳を見て「この工事にはこれだけのコストがかかるのか」と理解してもらえれば、無理な値引き交渉を避けられるケースも多いでしょう。
また、単純に金額を下げるだけでなく、値引きと引き換えに条件を調整する方法も効果的です。
例えば、材料のグレードを一部下げる、工期を延長して人件費を抑える、支払条件を前払いにするなど、値引きに見合った代替案を提示できれば、双方が納得できる解決策となります。
エクセルでは関数を用いて、見積り金額を自動で計算が可能です。
ここからは、エクセルの具体的な編集方法についてご説明します。
まずは、見積書のフォーマットを用意してください。
インターネット上に無料のフォーマットが公開されているため、それを利用してもいいでしょう。
まず、単価と数量を掛け合わせて、項目ごとの合計金額(税抜)を算出します。
項目と単価、数量をそれぞれ入力しましょう。
金額の列に「=(単価のセル)*(数量のセル)」と関数を入力します。
半角英数字で入力しましょう。
たとえば、こちらの画像の場合は、単価のセルが「C2」、数量のセルが「D2」となるため、金額のセルに「=(C2)*(D2)」と入力します。
ちなみに、手打ちでセルの番号を入力しなくとも、クリックや範囲選択すれば、セルを指定することも可能です。
単価と数量に数値を入れると、自動で計算されます。
関数を入力した金額のセルを、他の項目にコピー&ペーストすると、他のセルでも関数を反映可能です。
上記の作業で、各項目の計算ができました。
次に、各項目の小計を計算します。
小計欄に「=SUM(金額のセル範囲)」を入力します。
こちらの画像では、「E2」〜「E4」までを範囲とするため、「=SUM(金額のセル範囲)」と小計欄に入力しました。
エンターキーを押すと、自動で算出されます。
さらに、小計から消費税額と、合計金額(税込)を算出します。
消費税欄には、「=(小計のセル)*(0.1)」を入力しましょう。
合計額欄には、「=(小計のセル)+(消費税のセル)」と入力します。
これで、各項目から合計金額(税込)を自動で算出するエクセルが完成します。
何度か見積書のやり取りをし商談が最終段階になると、施主様から「キリの良い金額にして欲しい」と言われることもあるでしょう。
値引きを行う場合、小計額を減らし、そこに消費税10%をかけてから、合計金額がピッタリの数字になるよう調整することとなります。
その場合、ピッタリの数字から逆算して、各品目や小計の値段を調整することは至難の技です。
「もう一度、関数をいじることは面倒臭い……」という方には、エクセルの『ゴールシック機能』をおすすめします。
ゴールシック機能とは、元々設定している関数を使って、自動で逆算をしてくれる機能です。
つまり、端数を値引きした後の合計金額(税込)を、セルに入力することで、エクセルが帳尻を合わせます。
やり方は、エクセル上部の「データ」から「What-If分析」の「ゴールシック」を選びます。
そこで出てくるボックスの「目標値」を値引き後の合計金額にし、「変化させるセル」を選択します。
最後に「OK」をクリックするだけで完了です。
このように、エクセル任せで逆算ができるようになります。
計算の苦手な方にも役立つ機能です。
ここまでエクセルの関数設定についてお伝えしてきましたが、中には「便利だが、操作が覚えられない。大変そう」と感じられた方もいるはずです。
商談が難航し、見積書の修正に修正を重ねていくと、計算式はより複雑になり、エクセルに詳しい方でなければ、手に負えなくなる可能性も。
そこで、おすすめは、見積り金額を自動計算してくれるシステム『AnyONE』の導入です。
AnyONEは、工務店に特化した業務効率化システムで、見積り計算について次の機能が備わっています。
AnyONEを導入した場合、上記でお伝えした関数の設定や算出方法について考える必要はありません。
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AnyONEは値引き項目を自動で作成し、微妙な金額の調整も簡単に行えます。
エクセルのゴールシック機能と、同じように逆算機能も使えます。
しかも、入力が必要な箇所は値引き後の合計金額(税込)のみ。
逆算による計算ミスの発生も防いでくれるでしょう。
見積書の計算方法について、ご理解いただけたでしょうか。
書面よりもエクセルを使うと便利に計算はできますが、エクセルが苦手な方には難しいこともあるでしょう。
今回ご紹介したAnyONEの自動計算機能を使うことで、見積書の作成・編集で起こりうるトラブルを防ぐことができます。
発注のタイミングを逃さないよう、スピーディな見積書を提出できる体制を整えましょう。
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